個人情報の保護と個人の秘密および権利(1) | ScanNetSecurity
2024.04.26(金)

個人情報の保護と個人の秘密および権利(1)

●「個人情報保護のため」という混乱

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●「個人情報保護のため」という混乱

本年4月、個人情報の保護に関する法律が全面施行され、個人情報の保護が求められることになったが、本法の施行後、巷では、「個人情報保護のため」という名のもとに本法の趣旨とは異なることが横行し、「個人情報の保護」を名目とした紛争も発生している。

たとえば、詐欺的商法摘発の記者会見に際して、警察は個人情報の保護を理由に被害者名をあげることを拒絶し、耐震強度が偽造され倒壊のおそれが発覚した際に、個人情報の保護を理由に該当マンションを特定することを拒み、病院は、患者の個人情報の保護を理由に、窓口で個人名を呼ぶのを止め、病室から個人名を外し、有名人の入院に際しては「入院しているか否か言えない」と断り、個人情報の保護を理由に高額納税者長者番付・国家試験合格者名の公表が廃止され、銀行を介した架空請求被害者の被害の差止めや調査に際して、銀行は、個人情報の保護を理由に、迅速な対応を取らず、学校では、個人情報の保護を理由に、成績番付の張出しが中止されるなど、さまざまな現状が起こっている。

ここに列記した事項は、本来、個人情報の保護とは関係のないことである(特定の場合に個人情報の保護が絡んでくることも無縁とは言えないが……)。それのみか、それらを公表することが社会的・公益的・教育的観点から重要であるものも少なくない。にもかかわらず、「個人情報の保護」を理由に公表が差止められているのであって、事情によっては、悪質な情報隠蔽であり、情報公開の流れに逆行するものである。

そもそも、このような事態が起こった背景には、「個人情報」とは何かが正確に捉えられていないことがある。そのために、「個人情報」と、「個人の情報」や「個人に関する情報」、あるいは「個人の秘密」や「個人の権利」などとの混同が頻繁に発生しているものと考えられる。大部分はそこから生じる誤解や過剰反応である。

また、「個人情報の保護」という意味や内容を正確に理解していないために、「個人情報の保護」を名目に、「情報開示」「情報公開」に逆行する行動となり、正当な職務の執行や権利の行使を制限し、社会正義の実現や被害の防止などを害する結果となってしまっている。

さらには、「個人情報の保護」の例外規定の意味を誤って解して、保護しなければならない個人情報を保護の対象外とし、法の趣旨を誤解して、保護対象外であるからとして個人情報を保護されない状態に置くなどの現象も起こっている。

【東京基督教大学教授 櫻井圀郎】

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《ScanNetSecurity》

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