第30回「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」 平成19年4月経産省発表「情報システム・モデル取引・契約書」(16) ソフトウェア開発委託契約の成否をめぐる判例(商法512条)(2) | ScanNetSecurity[国内最大級のサイバーセキュリティ専門ポータルサイト]
2018.10.19(金)

第30回「ソフトウェア契約に潜むリスクとその法的対策」 平成19年4月経産省発表「情報システム・モデル取引・契約書」(16) ソフトウェア開発委託契約の成否をめぐる判例(商法512条)(2)

●40 大阪地裁平成14年8月29日判決「スーパー土木事件」(続き) (平成11年(ワ)第965号 著作権侵害差止等請求事件) (平成11年(ワ)第13193号 開発委託費等請求反訴事件)

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●40 大阪地裁平成14年8月29日判決「スーパー土木事件」(続き)
(平成11年(ワ)第965号 著作権侵害差止等請求事件)
(平成11年(ワ)第13193号 開発委託費等請求反訴事件)

前回に続き、大阪地裁平成14年8月29日判決「スーパー土木事件」について、今回は反訴請求の争点以下をご説明致します。

〔反訴請求〕
争点5 Xは本件開発委託契約に基づく残代金支払義務を負うか

本件開発委託契約及び追加契約に基づき計2700万円の支払義務を負うが、XがこれまでY1に支払った金額の合計は2300万円であるから、Xは、本件開発委託契約及び追加契約に基づく開発費残代金として、Y1に対し、400万円の支払義務を負う。

Xは、本件ソフトウェアは未完成品であるから、開発費残代金400万円の支払義務はないと主張するところ、前記1で認定した事実によれば、本件ソフトウェアには、基本機能設計書(乙8)記載の機能の一部が実現されていないことが認められる。しかし、Xが平成9年4月から平成10年6月までに本件ソフトウェアを186本という相当の本数販売し、未完成品であることを理由とする返品や解約が相次いだ事情を窺わせる証拠もないことを考慮すると、本件ソフトウェアは、当初仕様に未完成の部分があるとしても、一本の土木出来形自動作図ソフトウェアとしては完成していたと認めるのが相当であり、未完成品であることを理由として報酬の支払拒絶をすることはできないというべきである。

Y1がXに対して引渡義務を負う成果物として「基本要件設計書」「ソフトウェア仕様書」「プログラム仕様書」の記載があるにすぎず、ソースコードが引渡しの対象となる成果物であることを窺わせる記載はない。本件開発委託契約において、Y1にソースコードの引渡義務はなく、Xの開発残代金の支払がソースコードの提供と引換給付となることもない。

争点6 Y1と訴外Aの間には、本件ソフトウェアを1本販売するごとにライセンス料10万円を支払う旨の合意が成立したか。

訴外AとY1との間では、本件開発委託契約が締結された平成8年8月20日時点で、〔1〕Y1が本件ソフトウェア開発費用3438万5000円のうち1038万5000円を負担する、〔2〕Y1の負担分は、完成した本件ソフトウェアが1本売れるごとに、訴外AがY1にライセンス料名目で10万円を支払うことにより清算する旨の特約が成立し、本件見積書(甲3)に「値引き10,385,000円」「1ライセンス:100,000円」と記載されたこと、この特約は訴外Aから原告に引き継がれたことが認められる。

平成9年3月から6月にかけて原告が販売した本件ソフトウェアは61本と認められるから、原告が本件開発委託契約の特約に基づき被告に支払うべき平成9年6月分までのライセンス料の総額は610万円になる。

また、平成9年7月分以降の販売分について、原告が同年8月12日の提案に基づくライセンス料を支払っていないのは、平成10年7月度の売上げ1本(単価30万円)、同年8月度の売上げ1本(単価35万円)であることが認められる(甲8の13)。これらの売上げは、単価からみて、新規ユーザーに対する1本目の販売でないことが明らかであるから、平成9年8月12日の合意に基づくライセンス料は、それぞれ販売額の10%である3万円及び3万5000円となる。したがって、原告は、Y1に対し、本件開発委託契約の特約に基づくライセンス料残額として、上記各金額の合計である616万5000円を支払うべき義務を負う。

争点7 Xは追加開発費支払い義務を負うか

(1)仕様変更の意義について

ソフトウェア開発は、〔1〕要件定義、〔2〕外部設計、〔3〕内部設計、〔4〕ソースプログラムの作成(プログラム設計、コーディング)、〔5〕各種試験(単体試験、組合せ試験、システム試験)の開発工程を経て進められる。

本件開発委託契約では、契約に先立ち基本要件設計作業(前記〔1〕要件定義及び〔2〕外部設計)が完了し、成果物として基本機能設計書(乙8)が提出されているので、本件開発委託契約に基づきY1が完了すべき業務の内容は、基本機能設計書(乙8)で確定された当初仕様(処理手順、操作画面の種類・相互関係、機能の表示・配置、入出力項目、画面表示、階層関係等)を内部設計以降の作業によって実現することであり、これが、本件開発委託契約に基づく報酬請求権と対価関係に立つ業務の範囲であると解される。

仕様変更の申出は、法的には、委託者による当初の契約に基づく業務範囲を超える新たな業務委託契約の申込みと解され、これに対して受託者が追加工事代金額を提示せず、追加代金額の合意がないまま追加委託に係る業務を完了した場合には、委託者と受託者の間で代金額の定めのない新たな請負契約が成立したものとして、相当の追加開発費支払義務が生じると解するのが相当である。

したがって、委託者の委託の趣旨が、当初仕様である基本機能設計書(乙8)に示された処理機能(乙56)に変更を加えるものである場合には、原則として仕様変更に該当し、X及びY1はいずれも会社であるから、Xには、当該仕様変更部分について相当額の追加開発費支払義務(商法512条)が生じるものと解するのが相当である。

ソフトウェア開発においては、その性質上、詳細については、仕様確定後でも、当事者間の打合せによりある程度修正が加えられるのが通常であることに鑑みると、このような仕様の詳細化の要求までも仕様変更とすることは相当でないというべきである。仕様の詳細に関する変更は、追加開発費用の対象とならないものと解するのが相当である。

一方、当初仕様には、ユーザーが作図した図形を登録する機能があり、「登録図形」機能の新設は、当初仕様の範囲内として仕様変更に当たらない。

デモ版の作成は、追加契約で規定された当初仕様の範囲内書体やボタンの配置などの詳細な項目は、仕様変更には該当しない本件仕様変更に基づく開発工数は、上記工数の合計である257.5人/日とみるのが相当であり、これを1人/日当たりの開発費用を本件開発委託契約と同じ3万2500円(甲3では、単価は65万円〔1人/月当たり〕であり、一月の稼働日数を20日とすると、1人/日当たりの開発費用は3万2500円となる)として換算すると、本件仕様変更要求に基づく追加開発費用は、836万8750円とするのが相当である。

争点8 Xは保守契約に基づく保守料の支払い義務を負うか

Y1とXは、平成9年12月13日の打合せにおいて、本件ソフトウェア及びFCADの保守契約を締結することについて基本的に合意したが…

【執筆:弁護士・弁理士 日野修男】( nobuo.hino@nifty.com )
日野法律特許事務所 ( http://hino.moon.ne.jp/ )
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