Scan Legacy 第二部 2006年から2011年まで 最終回「Scan Legacy」 | ScanNetSecurity[国内最大級のサイバーセキュリティ専門ポータルサイト]
2017.11.20(月)

Scan Legacy 第二部 2006年から2011年まで 最終回「Scan Legacy」

特集 コラム

本連載は、昨年10月に創刊15周年を迎えたScanNetSecurityの創刊から現在までをふりかえり、当誌がこれまで築いた価値、遺産を再検証する連載企画です。1998年の創刊からライブドア事件までを描く第一部と、ライブドアから売却された後から現在までを描く第二部のふたつのパートに分かれ、第一部は創刊編集長 原 隆志 氏への取材に基づいて作家の一田和樹氏が、第二部は現在までの経緯を知る、現 ScanNetSecurity 発行人 高橋が執筆します。

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(本稿は可能な限り正確な記述に努めますが、記載事項にはときに、誤った記憶等により、正しくない場合があることをあらかじめおことわり申し上げます)


ScanNetSecurityの存続をかけて駆け回った2010年から約1年後の2011年8月某日、私は、引退後の悠々自適生活を送る初代創業編集長の原隆志さんに会うため北海道の札幌市にいました。

待ち合わせ場所として指定された、ススキノソープランド街至近の「CAFE RANBAN」というシックな喫茶店で待っていると、帝国の逆襲版のジェダイマスター・ヨーダのような、フワフワとしたあやつり人形感をいつものようにただよわせた原さんが現れました。

会うなり開口一番原さんは座る前から「高橋さん、今日の珈琲代、おごりだよね。おごり。おごり。おごり。おごりだよね」といつもの高揚感でまくしたて「パナマ・エスメラルダ・ゲイシャ」という名前からして高そうなスペシャルティ珈琲を注文しました。私は直近の状況報告などをしました。

原さん「そういえばバリオではTOBとかおもしろいこといろいろあってよかったねー。うらやましいなあ」

「面白いはずないじゃないですか! 乗っ取り直後は大変でしたよ。元ニューヨークの企業弁護士に売上の数字激詰めされるなんて、光通信とかIBMの営業会議の方がなんぼかましですよ。それに、及川さんって役員の人は、トランスデジタルとか、ネットマークスとか、月刊FACTAに出てくる経営者の友達が山ほどいたんですよ。こうして命があるのが不思議なくらいですよ」

原さん「でも社長には気に入られてたんでしょ」

「TOBから半年以内に単月黒字出したら、手のひら返すみたいに態度変わりましたね。まあ、会社乗っ取って数か月で子会社が劇的に収支改善したっていうのが嬉しかったんだと思います。ファンドの経営陣の存在意義を演出できたというか。社長のニックさんには役員会で握手されて、それ以降名前で呼ばれるようになりましたよ」

投資ファンドからは、3ヶ月以内に単月黒字を出さない場合、私は更迭、ScanNetSecurityは事業会社であることをやめてNPOに変えるという要求をつきつけられましたが、上野さん他、さまざまな方のご協力を得て、見事この目標はクリアすることができていました。

平成22年3月31日付月次決算で株式会社ネットセキュリティ総合研究所の営業利益はたった5,073円ながら単月黒字を達成しました。ちなみに前月の2月は108万5,515円の赤字。前々月の1月は165万6,260円の赤字でした。針の穴を通るような成功でした。

単月黒字を達成した月、取締役会議で哀川翔似の社長のニックさんは、わたしの手を湿った暖かいキャッチャーミットのような両の手のひらで握って、たっぷり1分間振り続けました。人懐こいチンパンジーにつかまってしまったようなバツの悪い気持ちで、私は一刻も早く手を離したかったのですが、これはニックさん個人の評価ではなく、もっと大きな存在と視点からの評価であることを私に伝えてくれたと後日思うようになりました。

原さん「Scanが今度はイードに買収されたんだって? いやー、あのケチな宮川さんがよく金出したよねー」

「だからやめて下さいよ、そういう言い方! いままでのM&Aで一番まともだと思ってるんですから。それに宮川さんの言ってるメディア運営哲学って原さんとおんなじですよ」

ネットセキュリティ総合研究所の親会社のバリオセキュア・ネットワークス社は、2011年3月にBIや帳票ソフトなどを扱う1stホールディングス社に無事売却され、それにともなって、1stの孫会社にセキュリティ専門誌が存在するシナジーが実質消滅し、NSRIはニックさんの知り合いだったイード社へ7月に売却されていました。

これは、Scanにとって4回目のM&Aであり8人目の社長でした。

宮川さんは原さんと相通じるメディア運営哲学を持っており、原さんの紹介で、M&A以前に私も何度かお会いして、運営に関する相談などをさせていただいていました。サイボウズ社や、バリオセキュア社とは、M&Aの目的も期待される事柄も違うと私は感じていました。セキュアスカイの乗口社長に言われた「Scanを買収すると社長は逮捕されたり更迭される決まりでもあるんですか」という言葉は今回こそくつがえされるだろうと考えていました。

原さん「北海道は社長が淫行で逮捕されて株式上場逃したBUGっていうIT企業とかあっていいところだよ。高橋さんもScanみたいなインチキ媒体辞めて札幌とかどう?」

いつもの洒脱なトークを繰り広げる原さんに私は、その場のノリで、ライブドアからScanが売却されて以降の変遷をコラムにしようと考えているという相談をしました。企画概要は下記の通りでした。


(1) 期間は2006年のライブドア強制捜査から現在まで

(2) その間私が目に焼き付けた、逮捕、上場廃止、M&A、TOB、社長更迭、自殺未遂等々を広く扱う

(3) ScanNetSecurityに直接関与した歴代の社長は、全員、私が尊敬するギャング映画の登場人物にたとえて、人物描写を行う

(4) (3)の手始めとして原さんを、北野武監督「BROTHER」に登場した、俳優の故 奥村公延氏が演じた花岡という暴力団の会長にたとえて人物描写を行う


原さんは、一杯1,200円もする珈琲「パナマ・エスメラルダ・ゲイシャ」をルーク・スカイウォーカーから食べ物を盗んで口に入れるヨーダよろしく、おいしそうに飲みながら、そのコラムに自分も参加して「ゴッドファーザーパート2形式」の連載にしようと逆提案しました。

ドン・コルレオーネとマイケル・コルレオーネのエピソードが交互に描かれる「ゴッドファーザーパート2」の構成にならって、執筆は私と原さんが行い、原パート(第一部)と高橋パート(第二部)に分かれます。

第一部、第二部どちらのパートも、2006年1月16日午後の東京地検特捜部によるライブドア強制捜査から開始し、その後、原パートではScan創刊からはじまって、強制捜査までを描き、高橋パートでは、強制捜査以降の3度のM&Aと6回の社長交代を描きます。なお、自分で書くのは面倒だということで、原パート部分は、取材や聞き取り、直接の原稿製作は、別のライターさんをアサインすることで合意しました。そこまで決まるとふいに「おごり、おごり、おごり。今日はごちそうさまー」と言いながら原さんはふらりとススキノのソープランド街の方向へ消えました。

その連載コラムの仮タイトルは「Scan Legacy」。私と上野さんが好きな映画「Tron」の続編タイトルからのインスパイアでした。

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Scan Legacy は、第一部がすでに終了しており、第二部連載も今回をもって終了します。Scanの歴代編集デスクが美人だけだった(本当)不思議や、Scan Legacy 連載の途中に、サイボウズ総帥の青野さんに偶然お会いして胆を冷やしたところ逆に暖かく激励されたこと、上野さんが海外へ観光で出かけていたときにミッコ・ヒッポネンのエイプリルフールにひっかかったこと、絶妙のタイミングで繰り出される高木浩光先生のScanNetSecurityへの言及に運営サイドが結果的に励まされた等々、他にも書くべき重要なことは山ほどあるのですが、それはまた別の機会に。お読みいただきありがとうございました。これまで15年間ScanNetSecurityを支えていただいたスポンサー各位及びとりわけ読者の皆様に心より感謝いたします。

(ScanNetSecurity発行人 高橋潤哉)
《高橋 潤哉》

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