2月に発生した分散型サービス使用不能(DDOS)攻撃事件を受けて、上下両院から成る両院協議会は2月29日、コンピュータ犯罪抑制のための新法が必要か否かを決定するため聴聞会を開いた。 コンピュータワールドの記事によると、米司法省高官は聴聞会で、速やかなハッカー検挙を目指すには法律の改正が必要だと述べた。さらに司法省はおよそ28パーセント増の来年次予算を要求しており、検察官や分析者の雇用とサイバー犯罪を捜査する連邦、州、地方警察の捜査能力の向上に充てられる予定だ。 2月に発生したDDOS攻撃の損害総額は12億ドルにも上った。しかし政府権限の拡大を恐れ、業界からは議会の新ハッカー対策に関し批判の声が上がっている。 AP通信によると、マイクロソフト社情報セキュリティ担当責任者Howard Schmidt氏は「インフラのセキュリティは、政府による管理は適さない」と用意した声明文を読み上げ、多大な利益を生むビッグ・ビジネスに対し不必要な介入および干渉を排除すべく議員に警告した。 一連のDDOS攻撃に遭った殆どの企業やインターネットサービス・プロバイダは、数時間内にサイトを復旧させた。シスコ・システムズ社の上級副社長Charles Giancarlo氏は「企業は今後の同様な攻撃に備えて早急に措置を講じ、迅速且つ効果的対処が可能なことを示した。我々はインターネット・セキュリティの分野で新しい法律を望んでいない」と用意した声明文を読み上げた。 サイバー犯罪者からインターネット関連企業を守るため、議会はすでに新法案もしくは改正案の作成を提案している。しかし、そのような議会からの熱心な要望は、攻撃の痕跡を辿るために使用される監視ネットワークへの懸念を高める結果となった。 プライバシー擁護団体、民主主義と技術センターのJames X.Dempsey氏は「民間企業がセキュリティ対策を強化した場合、その防御性能は政府の比ではないという事は明白だ。政府がセキュリティを支援する能力には限界がある一方、政府が害を及ぼす危険性は極めて高い」と指摘した。