理屈ではわかってる。ネットにつながった瞬間からいつ被害者になってもおかしくないし、犯罪者の疑いをかけられる可能性もある。だが、まさか自分には起こらないだろうと思う。
「あたしは証拠集めを始める。工藤さんはハイテックサポートの金の流れを調べられたら調べて。どこから金が出てるかわかればそこが元締めでしょ」
そんなことどうやって調べるんだと言いかけてすぐに悟った。ハイテックサポートの関係者のPCにマルウェアを感染させて情報を盗み出すのだ。敵の組織はシステムに通じた人間が多いはずだが、末端までそうとは限らない。サイバー軍需企業だってハッキングされて情報漏洩した実例はいくつもある。
「ハイテックサポートのフェイクニュースを流して、そこにマルウェアを仕込んでおく」
オレはすぐに答えた。フェイクニュースを見ようとリンクを踏むと、それらしいフェイクニュースが表示され、同時にマルウェアがインストールされるというわけだ。当然ハイテックサポートの連中も確認のためにサイトを訪れるだろう。何人か来た中でひとりでも間抜けがいればマルウェアに感染してくれる。
「このタイミングでハイテックサポートの名前を出すと、もろに工藤さんだってわかると思うけどね」
「どのみち疑われるのは間違いないんだ。やってみる。お前はなにをするんだ?」