“日本という国は弱者から搾取することで成り立っている。管理とは弱者から効率的に搾取することだ。そのためにはまず弱者を作らなければならない。誰だって弱者にはなりたくないが、たいていの者は生まれた時から弱者で死ぬまで弱者のままだ。そして代々続く。貧乏人は貧乏人のまま、親も子供も孫もずっと貧乏のまま。その弱者の社会でさらに序列を決める争いが起きる。醜く益のない戦いだ。この国はずっとネバーエンディング絶望ランドだった。だが、希望がない訳じゃない。絶望から独立せよ!”
夏神全壊(かがみ ぜんかい)著『絶望からの独立 モバイル国家宣言』序章より
まだ肌寒い三月の渋谷をひとりの女がとぼとぼと歩いていた。冬野亘望(ふゆの わたみ)は誰も待っていないホテルの部屋に戻る途中だ。重い病に冒されているように歩みがのろい。ぽっちゃりした体型だが、表情は暗く顔色も悪い。