夏神の再招集は予想外に早かった。その日の二十三時に夏神と冬野がノックもせずにオレの部屋に入ってきた。リビングでくたびれたTシャツにジーンズでジンをなめながらパソコンをいじっていたオレは驚く。
「お前ら、前もって連絡くらいしろよ」
「緊急だ。敵が迎撃してきた。しかも自前のトロール部隊のようだ」
夏神が固い声でそう言い、オレの向かいに腰掛ける。冬野はなぜかオレの隣に座った。バニラのような甘い香りがした。
「自前で持ってたんだ。さすがサイバー軍需企業。いや、待て、それって日本人のSNSアカウントだよな。世界各国で現地のSNSアカウントを武器化できる規模で持ってるってことか?」
「おそらくそうだろう。すぐに分析して核となるアカウント、トロール、それに操作方法を明らかにして迎撃の迎撃を行う。おそらく新聞やテレビのネタになる前に決着させるつもりだろう。ということは彼らが想定しているのはあと二十四時間くらいで騒ぎを終結させることだ」
オレのスマホが振動した。内山からのメッセージだ。
── 最悪の事態が発生したようです。真相を暴露したグループと、それを隠蔽しようとするグループが争い始めました。日本のSNSは戦場です。どちらの勢力も少なく見積もっても数百万います。政府筋は、緊急に対処すべきという意見と、充分な情報が集まるまで事態を静観すべしという意見で真っふたつに割れて身動きとれません。日本の人口を上回るトロールアカウントが投入されているって説も出てきて混乱してます。そちらにはなにか情報入りました?