いつの間にか完全に夏神のペースにはまっているが、こいつが本当にオレの敵じゃないという保証はまだどこにもない。実は裏で廃島とグルだったなんてことだってあり得る。
オレは自分のスマホとバッグを持って別室に下がる。
「もしかして疑ってる? あたしのことを調べるつもり? 時間のムダだよ。あたしは本人だし、夏神全壊は夏神商会の社長で古本屋の店主だけど、公安からマークされてる。ネット上の全日本サイバー革命家連合の主宰者で、構成員はネット会員二万人、実働部隊二〇数名ってとこ」
夏神が甲高い声で叫ぶ。察しのいいガキだ。オレは確かに夏神の身元を確認しようとしていた。自分の個人情報をさっき会ったばかりの相手に、おいそれと開示できるわけがない。ネットで検索すると本人が言った通りのプロフィールがwikipediaを始めとしていくつかで見つかった。下っ端の構成員が不正アクセス禁止法で逮捕されたニュースも見つかった。ネットの掲示板には腐るほど書き込みがある。
「わかった。わかった。ちょっと時間をくれ」
そう言いながら隣の部屋に移動して、同じ業界の知人たちにメッセージを送る。