片山が言うと、工藤は懐から小型の双眼鏡を取り出し、のぞき込んだ。ややあって双眼鏡をはずすとにやりと笑った。無言で片山に手渡す。
「それは……そうですが、そんなすぐにばれるようなことをするわけないでしょう」 「そうかもしれないが、ワンタイムパスワードのトークンは、世界中でただひとりあんたしか持っていない。他のヤツには、できない。そうだろ」
「途中で遮断されると、3時間くらいはアクセスできません。Windowsのアップデートで強制的にリブートされた時、そうなりました」山内の言葉に、工藤は天井を仰いでため息をついた。
「その最後の取引はなんだ? 外部送金になってるぞ。五万ドルか…」工藤が画面を指さした。山内の顔色が変わる。「ついさっき送金してる。あんたがやったのか?」