>>インタビューの前編を読む2015年2月にシーズン5が完結した『工藤伸治のセキュリティ事件簿』。作者の一田和樹氏は、「フィクション無し」のサイバー犯罪ミステリを多数執筆し、執筆当時空想に過ぎなかった事件が、その後現実となったケースもいくつか存在する。攻撃方法の着想の秘密や、自身が「もっともミステリっぽい作品」と評する工藤伸治のセキュリティ事件簿の新作である「シーズン6」の見どころについて、作者である一田和樹氏に聞いた。工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン5 第1回「プロローグ:創業社長」http://scan.netsecurity.ne.jp/article/2014/05/20/34212.html――ところで、一田作品で描かれた当時はアイデアに過ぎなかった事件や出来事が、現在では現実化しているというものがいくつかあります。こうしたものはどうやって着想しているのですか?着想の出発点は、論理的な帰結としてこうなるだろうというものが多いです。例えば、『サイバーテロ 漂流少女』で描かれた「ソフトウェアの更新サーバー経由でマルウェアを送り込む攻撃」というのも、マルウェアを用いた攻撃手法としては当然考えられるストーリーの一つでした。『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』で描いた「マルバタイジング」も同様です。――作品でそうしたツールや事象について描くのは、サイバー犯罪を色んな読者に知ってもらいたいというのが動機なのですか?サイバー犯罪の危険性を知ってもらいたいというよりも、むしろ、今がどういう時代なのかというのを作品を通じて認識してもらいたい、という思いが近いですね。――『工藤伸治のセキュリティ事件簿』は2015年2月でシーズン5が完結しました。今後、公開が予定されているシーズン6の予告や見どころを教えてください。シーズン6は、ある企業で個人情報が盗み出され、その情報の対価として身代金を要求されます。そして、内部犯行と思われる犯人を工藤伸治が追い詰めていくというストーリーです。見どころは、個人情報が抜き出された端末は特定できたものの、監視カメラに犯行現場は映っていなかったというトリックを、工藤が解いていくところで、工藤作品にしては珍しく、最後もきちんとカタをつけるというか、カタルシスのあるフィナーレを迎えます。その意味では、工藤シリーズのもっともミステリっぽい作品の一つといえるかもしれません。――シーズン1は、R式サイバーシステム社の個人情報漏洩、シーズン2がV-CRY(偽アンチウィルスソフト)、シーズン3はエリカとマギー(ハクティビスト)、シーズン4は超可能犯罪(容疑者と犯人が多数存在する犯罪)。そして、シーズン5がワンタイムアタッカーというテーマで連載が続いてきました。今後の工藤伸治はどうなっていく予定ですか?2010年から連載を開始して5年が経過し、今年で6年目に入ります。1年に1シーズンというペースで連載が続いてきて、もう5年経過したかという思いと、まだ5年しか経過していないという思いの両方があります。今後も、これまでの路線を踏襲して、1シーズン完結で工藤伸治には活躍を続けていってほしいと思っています。――立て続けに新刊を出されていますね。わたしが原作を担当して、以前ハッカージャパン誌上で連載していたコミック作品が「オーブンレンジは振り向かない:マンガで知るサイバーセキュリティ」という名称で刊行されます。また、2013年に刊行して好評をいただいたセキュリティ啓発本の家庭版である「ネットの危険を正しく知るファミリー・セキュリティ読本」が刊行予定です。――ありがとうございました。