声だけですぐにわかった。あいつだ。以前の事件では煮え湯を飲まされた。仇敵だ。もっとも向こうもオレに煮え湯を飲まされたと思っているかもしれない。痛み分けというヤツだ。
「待て! 相手はオレのことを知っているのか? いや、そもそも何者なんだ?」
「そりゃ、こういうことがあるからだよ。オレだってちょっとは修羅場を踏んできてるんだ。関係者が一番ヤバイってわかってる。」
まだばれていないと思っているんだろう。残念なことにオレは、豊かな想像力の持ち主じゃない。こいつがなにをしたかわかる決定的な情報を得て全貌を理解しただけだ。