「犯行は一度だけじゃなく、何回も繰り返し行われていた。派手にばれたのが、今回だっただけだ。今回だって複数の人間が犯行に及んでいた可能性もある」
ここまででわかった、あるいはわかったつもりになっているのは、この事件へのアプローチ方法だけなのだ。トリックを見抜いた、なんてとても言えない。本番はこれからだ。
「やらなくていいんじゃないですか」革命的なひとことを発した。
警察、検察、推理小説という存在を根底から覆す提案だ。
目から鱗が落ちるとは、このことだ。
鱗が落ちて新しい世界が開けたが、前の世界よりもさらにいろいろな可能性が大きすぎる。
「なに言ってんの?」
「明日も会社なので、突然肉欲に目覚めたのなら他を当たってください」
「なんか怒ってるの?」
「別に。ただ急だなあ、と思っただけです。自分の会いたい時に簡単に会える安い女ではないことをきちんとお話しておくべきだと感じました」