白濱氏:セキュリティのベースになるものが体系的に定義されていないことだと思います。セキュリティは範囲が広く、学ばなければならないものが多くあるので、学びながら自分で整理する必要があります。技術的なことでも低いレイヤからアプリケーションレイヤ、業務の話までありますし、それ以外にも倫理的なこと、リスクマネジメント、ガバナンスなどたくさんあります。これをトータルで見られるようにならないと育ちませんし、本当に必要とされる人材になりません。Joost氏:出発点は、大学で教育の枠組みを作るところだと私は思います。オランダでは大学にサイバーセキュリティの修士課程があり、ハッキング技術からビジネスとセキュリティの関連まで知識が得られ、卒業するときには全員のレベルが揃います。ベースができていれば、そこから広げたり特定の領域を深掘りしたりすることも容易です。●評価について――そのような状況の中、セキュリティ人材の需要や評価は近年高まっていますね。白濱氏:確かに評価は高くはなっています。しかし、いわゆる事業会社でのニーズはまだ見えない状況です。コンサルティング会社やセキュリティベンダではない事業会社が、セキュリティ技術者を募集するという話はあまり聞きません。よほど大きな会社以外はセキュリティ技術者を募集することは少ないです。せっかくセキュリティを専攻しても、セキュリティ専門で募集している会社が少ないとなると、学生はセキュリティを学ぶことがトクかどうか悩んでしまいます。また、日本の会社の多くはジョブローテーション制です。様々な業務を経験できるジョブローテーションによい面もたくさんありますが、大学で学んだ専門性を追求し技量を積んでいける環境がいまの日本の会社にあるかというと、まだまだ難しい状況だと思います。Hugo氏:オランダでサイバーセキュリティは、カッコいいクールな仕事だと思われています。セキュリティ人材への評価は、セキュリティに対する社会の考え方、とらえ方と比例していると思います。Joost氏:セキュリティは非常に重要なもので、もっとセキュリティの専門家、技術者が必要ですが、学生も少なくオランダでさえ人材不足です。●そもそも「いいセキュリティ人材の条件」とは――ここで3人が考える「いいセキュリティ人材の条件」を聞いてもいいでしょうか。