EDR (Endpoint Detection and Response)カテゴリを代表する企業 米タニウム社 チーフセキュリティアーキテクト Ryan Kazanciyan 氏にUSの最新セキュリティ動向を聞くインタビュー後篇では、数十万台の端末のフォレンジックを15秒で実現する同社の技術的アーキテクチャ、そして日本市場への期待などについて話を聞いた。
最大の特徴はスピードとスケールです。タニウムのプラットフォームはEDRツールとしてではなく、あらゆる規模のシステムで機能する、可視化とコントロールとを瞬時に行うエンドポイント管理のソリューションとして設計されています。タニウムの開発チームは、最初の 5 年間をその理想を実現する通信モデルとアーキテクチャの設計に費やしました。その実装が完了し、安定的に動作するようになってから、その上に載せるEDR や IOC(Indicator of compromise)検索、フォレンジックやパッチ適用、設定管理といったワークフローの追加開発を行いました。最初にアーキテクチャを設計したおかげで、機能追加の際に根本的な見直しを行う必要はありませんでした。通常の製品はその反対で、特定の機能の実現を目的に設計されるため、設計時の想定を超えて汎用的なプラットフォームへとスケールすることはできないのです。
タニウムのプラットフォームは、独自の通信アーキテクチャを基礎に、検知やインシデントレスポンス、セキュリティオペレーションといった機能群が実装されていますが、この設計思想が競合他社製品に対する最大の差別化ポイントなのです。タニウムは単一のプラットフォームと単一のエージェントですべてを実現します。私は昨日、フォーチュン 50 に名を連ねる企業のCISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)と打ち合わせを持ちましたが、彼女の企業のデスクトップPCには平均 16のエージェントが導入されているとのことでした。それら 16 の製品のトレーニングやサポートには、技術的にも人的にも多大なコストがかかります。
──タニウムのプラットフォームのアーキテクチャについて、詳しく教えてください。
端末を管理するシステムの大部分は、個々の端末が直接管理サーバと通信を行うハブアンドスポークモデル(hub and spoke model)と呼ばれるアーキテクチャを採用しています。端末が増加すれば複数台のサーバが必要となりますし、ロードバランシングを行う必要も発生します。それはスケールとスピードを求めるタニウムの理想からはかけ離れています。