工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン3 「エリカとマギー」 第6回「工藤ちゃん」 | ScanNetSecurity[国内最大級のサイバーセキュリティ専門ポータルサイト]
2018.04.22(日)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン3 「エリカとマギー」 第6回「工藤ちゃん」

特集 フィクション

>>第 1 回から読む

第2部

その朝、オレはご機嫌斜めだった。なぜかというと、朝立ちしていたからだ。いや違う。悪いのは朝立ちじゃない。本来なら、オレの横にいるべき女がいないことだ。

女がいれば、せっかくの立っているもので、つんつんして、「ああん、なにバカなことしてんの」なんて、いちゃいちゃができるのだ。それなのに、いない。ひとりだと、単にトイレが不便なだけでなにもいいことがない。そこにもってきて、あの野郎からの電話だ。

「工藤ちゃん!」

とうの昔に日本のブーミング・デイズは過ぎ、バブルは崩壊して過去の遺産だ。未だにオレを「ちゃん」づけで呼ぶ生きた化石はこいつしかいない。大手広告代理店の営業マンにして、オレのエージェントである沢田だ。頭の中は、いつもアロハな無責任男。

こいつのクライアントには、間抜けなシステムを開発したり、運用したり、クラッキングされたり、個人情報盗まれたり、Web改ざんされたりしている企業が山ほどある。

でもって、なにをどう考えるんだか理解に苦しむんだが、この間抜けなクライアントは、広告代理店に相談するわけだ。すると広告代理店は無責任と適当が事業の本質なので、ろくに考えもせずに「おまかせください。大丈夫です」と口からでまかせを言って、できもしない案件を引き受ける。正しい日本語で言うなら、「安請け合い」というヤツだ。あるいはカラ手形ともいう。

もちろん沢田の会社はシステムのことなんか知らないから、オレに相談が来る。つまり、オレは、サイバーセキュリティコンサルタントだ。

最先端の仕事のように聞こえるけど、実際にやっているのは、企業などの、表沙汰にできないトラブルを処理する泥臭い地味な仕事だ。どぶさらいに近いと思う。

しかし、脳みそが腐ってるとしか思えない沢田も最近は、オレのことを「さん」づけて呼んでいたはずだ。なんの因果で先祖返りしたんだろう。先祖の墓でも暴いたんだろうか?

「工藤さん、だろ。さんづけで呼んでくれよ」

「あーあー、すいません。いい話なもんで、ついつい昔のくせで、ちゃんづけしてしまいました。工藤先生!」

この調子のよさといい加減さが沢田というか、広告代理店の持ち味だ。

「エリカさんからご相談が来たんですよ。絶対内緒ですよ!」

《一田和樹》

Scan PREMIUM 会員限定記事

もっと見る

Scan PREMIUM 会員限定記事特集をもっと見る

カテゴリ別新着記事

★★Scan PREMIUM 会員限定コンテンツにフルアクセスが可能となります★★
<b>★★Scan PREMIUM 会員限定コンテンツにフルアクセスが可能となります★★</b>

経営課題としてサイバーセキュリティに取り組む情報システム部門や、研究・開発・経営企画に携わる方へ向けた、創刊19年のセキュリティ情報サービス Scan PREMIUM を、貴社の事業リスク低減のためにご活用ください。

×