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軽快なテンポで、一気に読めました。
情報システム屋にとっては、作中のいくつかの事例が、ネット犯罪の背景や深さをストーリ性をもって感じることができる良い教材になると思います。
セキュリティ屋にとっては、「あっ実名」とか、「あっこれは○×さんがモデルだ」と、ニヤニヤしながら読める、良い意味での内輪受け部分を面白く感じるでしょう。
一方、登場人物が色々情報を漏らしすぎるので、「こいつ怪しい」「こいつ真犯人」と特定した人物が、「あーやっぱりそうだった」となる点は、良い意味で「読者も参加できる」、悪い意味では「すぐにネタバレ」で、推理小説としての評価はやや辛口になりますね。
エピローグは映画のシノプシス調で、「これが本編だったのか」「なるほど、タイトルはここか」「主題はここなんだ」と読ませる感じが斬新でした。ただし、これは賛否両論でしょうか。
情報システム系の業務経験があり、現在は編集の仕事に就いている妻にも読んでもらったところ、
「情シス系の人には面白いかもしれないね。ただし、中途半端に知識があると、フィクションなのか、ノンフィクションなのか判別できない部分があって、かえって読みにくかった。ストーリー的には、結末がモヤッとしていて、読後スッキリしないのが残念」
という感想でした。
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ちなみに、気になった用語と、箇条書きの部分にそれぞれ色違いのフセンが貼られ、校閲後のような状態になって妻から戻ってきました(写真)。
(株式会社日立情報システムズ 本川 祐治)
本川 祐治(もとかわ ゆうじ)
株式会社日立情報システムズ ネットワークインテグレーション本部 主管技師長
1985年入社。メインフレームの運用管理やインターネット関連システムの構築、SOC運用を経て、情報セキュリティ関連調査研究の取りまとめを行う一方、情報セキュリティ緊急即応部隊「SHIELD110」リーダー
Blackhat Japan コーディネータ
IAJapan セキュリティ研究部会副部会長
ISACA教育委員会
セキュリティ・インシデント緊急対応サービス「SHIELD110」
http://www.hitachijoho.com/solution/shield/consulting/110.html
「檻の中の少女」一田和樹著/原書房刊
http://www.amazon.co.jp/gp/product/456204697X