工藤伸治のセキュリティ事件簿 第19回「クスリ」 | ScanNetSecurity
2024.04.20(土)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 第19回「クスリ」

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昼になると、オレは眠くて仕方がなかった。

「お疲れ様です」

弁当を買いに行っていた葛城が会議室に戻って来た。

「眠そうですね。はい、ご希望のハンバーグ弁当です」

オレは葛城から弁当を受け取った。

「罠を張った甲斐があったよ。証拠は揃った。和田のパソコンからのサーバへのアクセス記録が残ってた。和田のパソコンには、ごていねいに脅迫に使われた暗号化された顧客情報もあった。それに決定的なのは、監視カメラの記録だな。ばっちり犯行現場が写ってた」

「予想以上の収穫ですね。几帳面なのが裏目に出ましたね」

オレはうなずいた。

「そうそう、身体検査の速報が来たんだ。これから独り言を言うぜ。訊きたいことがあったら、あんたも独り言を言うんだ」

オレが言うと葛城は不安そうな表情を浮かべた。

「えーとさ。家のローンや車のローンはあるヤツ多いね。あと、カードローンもみんなやってる。ただ、ちょっと多すぎるのが二人いた。和田と遠山だ。和田は150万円ちょっと。遠山は450万円。多いよな。借金っていうのは400万円越えてくると、いわゆる危険水域なんだ。500万円越えたら、確実にヤバイ。今のところは街金とかヤバイ筋はないね。ざっと調べた範囲では、ヤクザとの接点はないみたいだ。でも、遠山に関してはクスリの可能性があるってさ。よく出入りしてるクラブがそっちでは有名なとこなんだって」

オレが弁当を食いながら独り言を言うと、葛城は唖然とした顔をしていた。

「クスリ?」

「独り言を言え」

「なんでクスリなんかするのかなー?」

オレは葛城の下手な芝居に噴き出しそうになった。

「クスリは簡単に手に入るんだよ。クラブとか、ライブハウスで、素人が売人をやってたりする。錠剤とか、チョコとか、金魚の形の醤油入れとか、クスリとは思えないような形で売ってるんだ。最初はタダでくれたりするしね。クスリとは知らずにやって、ずるずると抜けられなくなるっていうよくあるパターンなんだろうなあ」

>>つづき
《一田 和樹》

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