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2017.12.12(火)

【ビジネスモデル特許の現状と今後 第2回】(特許庁審判部審判官 日高賢治)〜Scan Security Handbook Vol.4抜粋記事〜

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3.特許制度の行く末

 現在、世界の知的財産権の共通ルールは、国連の下部機関である世界知的所有権機構(WIPO)と世界貿易機関(WTO)の2つの機関で議論とルール化が進められています。WIPOは、知的財産権の専門機関として各国との利害調整とともに共通の制度構築に向けた取り組みを行っており、特許法に関して言えば、今から6年程前に、先願主義や公開制度を含む「特許法条約(草案)」が採択される直前まで行きましたが、先発明主義と出願非公開制度(注)を持つ米国の拒否によって現在まで棚上げ状態となっています。

 WTOは、前身のGATT/UR(ウルグアイラウンド)で議論されたTRIPs協定(知的財産権の貿易的措置)の発効によって、通商ルールとして最低限の保護規定を各国が履行する義務を負うようになっています。

 一方、サブマリン特許の温床である米国の非公開制度と先発明主義は、ビジネスモデル特許についても極めて脅威となるものです。21世紀を迎えても、世界経済が米国の主導による知的財産権を重視した自由な市場主義を継続拡大していくことは間違いないでしょうが、世界で唯一である米国の特異な制度の一刻も早い改革が望まれています。

 また、ソフトウェアに関していえば、プログラムそのものやGUIによる表現等は著作権で、概念的なアルゴリズムや処理システム等は特許権によって保護される事が、事実上世界共通のルールになろうとしています。またゲノムについても、配列の解明だけでは特許の対象としないことも、先進国間では共通の合意になっています。

 ITやバイオは、人類が過去に経験のない新しいイノベーションであり、その原点となるテクノロジーやサイエンスに関しては、その保護範囲や保護形態、権利の効力の面について、産業革命以来数百年間基本的な仕組みを変えていない特許制度で対応しきれるのかどうかについても、本来、十分な議論が必要ではないかと感じています。

 現時点において、各国の特許制度を「ビジネス方法」にまで拡大するかどうかについての議論は始まっていません。ネットビジネスが国境を越えて自由に行われるものである以上、近い将来必ず議論される時期が来るはずですし、その時には、我が国政府・議会として、経済学的かつ社会学的見地から分析した確固とした方針とルールのあり方を提示しなくてははならないでしょう。

(注)米国は、昨年の特許法改正で、外国へ出願するものについては出願公開 する制度を導入することとなった。


4.企業における当面の対応

 特許のもつ最大の怖さは、「ある日突然」にあります。先日、日本においてもインターネット・プロバイダー業界の多数の企業に対して、ある特許権者からの警告文がメール配信されたことが大きな話題を呼びました。しかし、米国を始めとする世界中には、現在行われているほとんどのネットビジネスが抵触する特許が出願され、また今後特許として成立するかもしれません。特に、ネットでの危険性は、国境を越えたサービス(国境を越えてサービスを提供できる環境にある)が、我が国の特許ではなく、諸外国で成立した特許を侵害する可能性を否定できない点です。相互の話し合いで決着できればいいですが、ある日突然の警告と「○月×日、バージニア州連邦地裁に出廷されたい」となった場合には、訴訟費用だけでも数十億円を覚悟しなければならなくなります。損害賠償だけで解決できればまだよい方です。事業を差し止めされた場合には、サービス産業の場合、メーカー以上の打撃を被るのではないかと案じさせられます。

 ビジネスモデル特許の是非、発明の定義及び保護範囲、効力のあり方等については、各界における十分な議論を踏まえた決断と司法の判断に委ねるにしても、現実の問題に目をつぶっているわけにはいきません。日々毎日、多数のビジネスモデルの特許出願があり、そしてそれらが権利として発生している状況下において、個々の企業として取るべき対応はおおよそ以下のものが考えられます。

特許庁審判部
審判官 日高賢治
HKPA8402@jpo-miti.go.jp


※本記事は、Scan Security Handbook Vol.4(ビジネスモデル特許専門資料) からの抜粋記事です。Scan Security Handbook Vol.4は下記URLよりお申込 いただけます。
 詳細&申込: http://vagabond.co.jp/vv/p-sh04.htm

(詳しくはScan本誌をご覧下さい)
http://www.vagabond.co.jp/scan/
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