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2017.06.27(火)

【ビジネスモデル特許の現状と今後 第1回】(特許庁審判部審判官 日高賢治)〜Scan Security Handbook Vol.4抜粋記事〜

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はじめに

 「ビジネス方法自体を特許の対象外とする根拠はどこにもない」・・・1998年7月23日、米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC:知的財産権を専門に扱う控訴裁判所)が下した、いわゆるステート・ストリート・バンク事件判決は、米国金融業界はもとより産業界全体にとって大きな衝撃を与える歴史的判決でしたが、我が国では報道自体が極めて少なかったこともあって、一部のIT関連企業等を除いて、この判決が持つ重要性と本質的意味についての認識はあまりにも小さかったと言わざるをえませんでした。

 その後、我が国においてもアマゾン・ドット・コムやプライスライン・ドット・コムのような新手のネットベンチャー達のビジネスアイデアが特許として成立したこと、マイクロソフト社やバーンズ社が彼らの特許権を侵害したとして特許侵害訴訟を起こされた等の報道が数多くなされるようになって、ようやく我が国産業界においても「ビジネスモデル特許」の存在が広く認識されるようになりました。

 そして「儲かる仕組みが特許に」とするマスコミ各社の記事では、これらが「知的財産権を武器とした米国の新たな特許戦略」として解説するものも多く登場しました。

 ビル・ゲイツの「ビジネスモデル特許は、現代のゴールド・ラッシュだ」と言う発言にも現れているように、米国特許商標庁では昨年1年間で約600件のビジネスモデル特許が成立し、未確認ではあるものの、ここ1、2年の間に数千件にも及ぶビジネスモデル特許が出願されていると言われています。

 過去、超伝導やバイオ・テクノロジーという新領域の技術的ブレイクスルーを契機として、日米を始めとする世界の特許庁に一時期に大量の出願ラッシュが起こったことはありましたが、あらゆる産業分野を巻き込んだ今回のビジネスモデル特許ラッシュは、世界の特許史上において歴史的出来事であることは間違いありません。

 つい最近まで、小難しい専門書として店の片隅のほんのわずかなスペースしかなかった特許関係の本も、今やちょっとした書店にでも足をのばせば、ビジネスモデル特許本を中心に、数多くの出版物を手に入れることができます。世に多くのビジネスモデル特許本が出回っている状況ではありますが、本稿では、この「ビジネスモデル特許」の本質を正しく理解し、攻撃及び防御を含めて我が国産業界が今後の企業経営にいかに活かしていけばよいのか、また知的財産権に関する国際ルールは将来どうなっていくのか、等について解説しようとするものです。読者の皆様の理解を正確にするために、敢えて「特許制度の本質」「知的財産権を巡る近年の国際動向」といった教科書的かつ役所的(つまらなくて眠くなる)内容から記述しています。

 なお、本稿は筆者個人の責任において執筆したものであり、記述した内容は特許庁としての公式見解でないことをご了承頂き、少しでも読者の皆様のお役に立てれば幸甚です。


第3章 ビジネスモデル特許を巡る予想される将来
    (知的財産権を巡る世界の動向と今後)

1.ビジネスモデル特許を巡る紛争

 80年代後半から90年代初頭において、我が国のメーカーが米国企業や個人発明家の特許によって莫大な損害賠償を払った時、彼らは少なくとも特許のプロであったし、それ以前であったなら、あそこまで衝撃的な打撃を受けることはなかったでしょう。よくも悪くも、知的財産権の保護強化を世界規模で進める米国の戦略とその動向を事前に十分勉強していたなら・・・と言う思いであったはずです。

特許庁審判部
審判官 日高賢治
HKPA8402@jpo-miti.go.jp


※本記事は、Scan Security Handbook Vol.4(ビジネスモデル特許専門資料) からの抜粋記事です。Scan Security Handbook Vol.4は下記URLよりお申込 いただけます。
 詳細&申込: http://vagabond.co.jp/vv/p-sh04.htm

(詳しくはScan本誌をご覧ください)
http://www.vagabond.co.jp/scan/

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