「ActiveDirectory はなぜ狙われるのか?」この謎を解くべく取材班がアマゾンの奥地へと…向かうのはツイートのテンプレのひとつだが、業務システムの認証インフラとなっている ActiveDirectory はサイバー攻撃対象の堂々の定番である。
このテーマを我々は、南米の奥地ではなく昨秋開催された「CODE BLUE 2021」の講演から考えてみたい。本稿は、サイクラフトジャパン シニアリサーチャー 村上弘和氏の講演「企業における ActiveDirectory の運用とセキュリティのバランス」の内容をベースに構成した記事である。
●攻撃者が集まる ActiveDirectory の周辺
そもそもの理由は採用率が高いシステムであること、そして脆弱性が少なくないことだ。しかし、脆弱性は ActiveDirectory に限った話ではない。およそソフトウェアには何らかの脆弱性が潜んでいるものだ。また、多くの企業が使っているからこそ、攻撃者や研究者の研究対象となり、結果として攻撃事例も増え、脆弱性も多く発見される。
ここに興味深い事例がある。2021 年 9 月、攻撃グループ Conti に関して、内部告発と見られるランサムウェア攻撃マニュアルが流出した。Conti は 2020 年ごろから活動が確認されたサイバー攻撃組織で、サービスとしてのランサムウェアプラットフォーム(RaaS)を、アフィリエイターに提供していることで知られている。
アフィリエイターが身代金の取り分に不満があったらしく、攻撃マニュアルなどをネットに放流した。この文書は、ロシア語で記述されていたが、ハッカーやセキュリティ研究者らによって英語に翻訳され、解析と分析が始まった。その中に、ActiveDirectory への攻撃方法やツールの利用方法に関する情報が多く発見されたという。