歴史的名著であるこの本には、コンピュータサイエンスを勉強するにあたって最低限必要な数学、整数論、集合論、組み合わせの数を数えるやりかたなどが最初に書いてあって、そのあとに仮想的な CPU のモデルを決めて、その CPU の上で仮想的なアセンブラ言語を定義して、いろんな処理をやらせます。
仮想的な CPU を用いるのは、CPU にはいろいろなバリエーションがあって、有名なのはインテルの x86 や ARM の CPU などですが、個別の CPU について学んでしまうと他の CPU のことがわからなくなるので、著者のクヌース先生は、自分で勝手に仮想的な CPU をモデルとして作ったわけです。
実はセキュリティでもアセンブラはすごく大事です。マルウェアの多くはバイナリ(機械語)形式ですから、機械語を解読しなければならないのですが、機械語はアセンブラには簡単になるのですが、アセンブラからさらに C とか Java などの高級言語に変換するのは、それをやるのが学術研究になっているぐらい難しい。セキュリティエンジニアが、機械語で書かれたマルウェアをちゃんと解析しようと思ったら、アセンブラを読める必要があります。
「 Switching & Finite Automata Theory 」と「 The Art of Computer Programming 」は両方古典ですが、土台から最上部まで、電子回路から高級言語の手前のアセンブラまでを、この 2 冊を頑張って読めば相当なレベルまで理解することができるでしょう。