道がふさがれる可能性を考慮して「災害時退避場所」までの経路を設定する | ScanNetSecurity
2024.03.19(火)

道がふさがれる可能性を考慮して「災害時退避場所」までの経路を設定する

 サラリーマンにとって1日の大半を過ごすことになる会社周辺。このご時世、家にいる時間よりも職場にいる時間の方が長いという人も少なくないだろう。

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 サラリーマンにとって1日の大半を過ごすことになる会社周辺。このご時世、家にいる時間よりも職場にいる時間の方が長いという人も少なくないだろう。

 少し前に「住民と通勤者で異なる避難場所……もしも会社で被災したら?」と題したコラムで、通勤者(帰宅困難者)の避難場所となる「災害時退避場所」について書いたが、今回はさらに一歩進んで、千代田区にある勤務先から「災害時退避場所」として指定されている「北の丸公園」まで実際に歩き、東日本大震災当日の揺れや周辺の被害状況を思い出すなかで気づいたことをまとめていきたい。

●目線を変えることで気づくリスク

 普段何気なく歩いている時には、皆さんはどこを見ているだろうか? 私の場合は基本的に進む先を何気なしに見ている。

 しかし、地震報道を見ていると、大地震後には、通れたはずの道路が土砂やがれきでふさがれていたり、思いもよらぬものが上から落ちてきていることに気づく。

 東日本大震災当日を思い出すと、勤務先周辺でも木造家屋を中心に、屋根瓦が落ちたり、土壁の倒壊、さらに家自体の倒壊が幾つか起き、一部の歩道が塞がれ、クルマと歩行者、そこに見物人が加わり、ちょっとした混乱状況が起きていた。

 それを踏まえると、「災害時退避場所」までの経路を考える場合には、道がふさがれる可能性が低い、国道のような大きな道路沿いを軸とした避難ルートの設定が最適だといえる。

 筆者の場合は、徒歩1、2分で国道に出れる立地に勤務先があり、国道に出るための比較的細めの道も複数ルートあり、仮にどこかのルートが塞がったとしても、別ルートから国道に出られる状況にある。

 基準となるルートを選んだら、今度はそのルートを実際に歩いて、道路沿いの建物の築年数や種類(木造か鉄筋コンクリートかなど)、工事中の箇所、落下が想定されるものなど、災害を意識しながら歩いてみた。すると素人目にもわかる危険箇所を発見できたり、「耐震診断済」と書かれた建物に貼られた青色のステッカー、「千代田区 総合防災案内板」、「災害時帰宅支援ステーション」といった防災に関連した取り組みに気づくことができる。

●耐震基準を示した青色のステッカー「東京都耐震マーク」

 例えば実際に歩いている際に都営地下鉄の入り口で見つけた「耐震診断済」という青色のステッカー。調べてみると、東京都が2012年4月より始めた「東京都耐震マーク表示制度」という取り組みで、申請があった耐震基準に適合した建築物に対して無料でステッカーを配布を行っている。種類は3種類あり、「新耐震適合」(昭和56年6月以降に建てられた建築物)、「耐震診断済」(耐震診断により耐震性が確認された建築物)、「耐震改修済」(耐震改修により耐震性が確保された建築物)に分類されている。このステッカーが貼られていることで、耐震への一定の安全性の担保になるので、避難ルート中にこうした建物があるかを確認しておくと避難中に大きな余震に遭遇した場合に安心だ。

 また、こうした施設に関しては、「一時滞在施設」という形で、帰宅困難者向けに利用させるケースもある。主に駅や学校、オフィスビルなどが該当し、東京都防災ホームページで一部公開されている。ただし、災害発生時に「一時滞在」としてではなく、被災者が最初からそこを目指してしまうと収容キャパシティを超えてしまう恐れもあるため、事前に公表していないケースもある。そのため、十分な支援を受けられない可能性もあるので、「一時滞在施設」に関しては、他に行く場所がない時、大規模な余震があった時の一時避難の場所と考えておく方が得策だ。

●経路上にあるコンビニなどをチェック

 続いて確認したいのが、コンビニやカラオケ店などの店頭に貼られていた「災害時帰宅支援ステーション」のステッカー。実はこのステッカーを貼っている店舗は、帰宅困難者向けにトイレの貸し出しや、水道水の提供、各種道路情報の提供といったことを行うという、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市で構成される九都県市の防災協定に賛同した事業者ということになる。

 対象となる業種は、コンビニ、ファストフード、ファミリーレストラン、居酒屋、ガソリンスタンド、カラオケスペースなどで、被災状況によっては対応できないケースも出てくるだろうが、どの店舗が対応しているかを平常時のうちにチェックしておきたい。また、同一系列のチェーン店でも、ステッカーを貼ってないお店もあるので要注意。

 ちなみに東日本大震災の時には、まだこうした「災害時帰宅支援ステーション」の概念はなかったが、とあるたい焼き店では、帰宅困難者向けに商品のたい焼きを無料配布したり、ケータイショップでは充電設備の無償提供、コンビニやファストフード店の多くがトイレや水道の貸し出しを行っていた。そうしたことを踏まえるなら、避難ルートにどんなお店があるのかを平常時から把握しておくと、いざという時の安心度は高まる。

●他言語表示で重要施設を示した「総合防災案内板」

 最後は「千代田区 総合防災案内板」。すべての自治体でこうした取り組みをしているわけではないが、少なくとも千代田区では、日本語と英語表記をベースに、災害時退避場所、避難所、病院、公衆トイレ(別途だれでもトイレも記載)などの重要施設を示す凡例に関しては中国語、韓国語でも表記する街頭地図を区内の随所に設置している。被災後に困っている外国人などに遭遇したら、言語がわからなくてもこの地図まで案内するだけでも少なからず力になれるだろう。

 平常時ならスマホの地図アプリなどを利用していた人でも、災害後、連絡手段としてスマホなどの携帯端末の電力をとっておきたい時などにこうした地図は重宝する。

 このようにいざ歩いてみると、何気なく歩いている時には気づかないものがいろいろと見えてくる。もちろん災害の規模により想定外の事態が起きることは、東日本大震災や熊本地震でも明らかだが、あらかじめ知っておくことで得られる心の余裕は大きい。

 次回は、「外回り先・アフター5に被災したら?」という視点で、普段、あまり馴染みがない場所での避難シミュレーションをしていきたい。

目線を変えることで気づくリスク……もしも会社で被災したら?#02

《防犯システム取材班/小菅篤@RBB TODAY》

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