工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン3 「エリカとマギー」 第3回「天と地」 | ScanNetSecurity
2024.07.27(土)

工藤伸治のセキュリティ事件簿 シーズン3 「エリカとマギー」 第3回「天と地」

笑いがこみ上げてきた。そしてひとしきり笑うと怖くなった。もしかしたら、つかまるんじゃないかという気がした。まあ、こんなことやって、怖がるのも変だけど、やっぱり怖い。

特集
>>第 1 回から読む

時間が零時を回っていたこともあって、すぐには反応がなかった。

まず数件のアクセスがあり、それからリツイートされた。数分後には、リツイートの嵐だ。あっという間に、Twitterのタイムラインが私のツイートのリツイートで覆われた。

そしてものすごい勢いでふぉぼったーさんから、あんたトップだよ!というツイートが飛んでくる。ふぉぼったーさんは、ツイートのふぁぼとRTを数えて1時間ごとにランキングをツイートしているのだ。昨晩から私はランキングを独占している。

あっという間にフォロワーは数千人を超え、夜が明ける頃には1万人に達していた。

笑いがこみ上げてきた。そしてひとしきり笑うと怖くなった。もしかしたら、つかまるんじゃないかという気がした。まあ、こんなことやって、怖がるのも変だけど、やっぱり怖い。

そのうち、ネットニュースに私のことが載ったというツイートが流れ出した。でも見るのは怖い。でも状況を知らなきゃ話にならない。おそるおそるネットニュースのサイトを開いた。

マウスを持つ手がじっとりと汗ばんで、ぬるぬるした。気がつくと口が開けっぱなしだ。道理で喉が渇くと思った。口で、はあはあ息して、お前は犬か。

「キタ」

ヤフーのニュースに載っていた。私がやったんだ。身体の半分がぴょーんと跳ね上がった。私は天才だ。もう半分はまっさかさまにウツに落ちた。どうしよう。犯罪者だよ、これ。捕まったら人生終わりかも。

でも、捕まらないよな。LulzSecだって捕まってない。なんでこの私が捕まるんだ。どうやったってわかるはずがない。私はWizard級ハッカー様だぞ。

ふと気がつくとメールが大量に来ている。Twitterのフォロワーが増えるごとにメールが届くようにしていたのだ。数を見て驚いた。1万件だって。笑っちゃう。

どんどん増えてる。ヤバイ、メールBOXがいっぱいになっちゃう。パンクはしないだろうけど、こんなのいちいち見てらんねえ。あわてて設定を変えて、フォロワーが増えてもメールで通知が来ないようにした。

フォロワーの数は、朝10時に2万人を超えた。自分がえらくなったような気分。不安な気持ちは千尋の谷に突き落として、軽々と次のステップに移るべし。

警察は、きっとアクセス元を調べようとするだろうけど、私の知識ではTwitterからアクセス元をたどるのは困難だ。Twitter運営会社は犯罪集団を追い出すこともない。どちらも、LulzSec騒動の時に明らかになった。

私は満足して、ネットを離脱した。次の仕事は1週間後だ。

>> つづき
《一田和樹》

特集

特集 アクセスランキング

  1. 今日もどこかで情報漏えい 第26回「2024年6月の情報漏えい」ふたつの “完全には否定できない” 違いは どこを向いているか

    今日もどこかで情報漏えい 第26回「2024年6月の情報漏えい」ふたつの “完全には否定できない” 違いは どこを向いているか

  2. 能力のないサーバ管理者 サーバモンキーはネットセキュリティの危険因子

    能力のないサーバ管理者 サーバモンキーはネットセキュリティの危険因子

  3. アンチ・シリコンジャーナリズム それってデータの裏付けあるの? 前編「存在しない『炎上』の作り方」

    アンチ・シリコンジャーナリズム それってデータの裏付けあるの? 前編「存在しない『炎上』の作り方」

  4. Scan社長インタビュー 第1回「NRIセキュア 柿木 彰 社長就任から200日間」前編

  5. 【無料ツールで作るセキュアな環境(67)】〜 zebedee 5〜(執筆:office)

  6. 日本プルーフポイント増田幸美のセキュリティ情報プレゼンテーション必勝ノウハウ

  7. 作っているのはWebアプリではない ~ S4プロジェクト チーフデザイナー かめもときえインタビュー

アクセスランキングをもっと見る

「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」
「経理」「営業」「企画」「プログラミング」「デザイン」と並ぶ、事業で成功するためのビジネスセンスが「セキュリティ」

ページ右上「ユーザー登録」から会員登録すれば会員限定記事を閲覧できます。毎週月曜の朝、先週一週間のセキュリティ動向を総括しふりかえるメルマガをお届け。(写真:ScanNetSecurity 名誉編集長 りく)

×