2024 年 10 月、本誌名誉編集長 りく が永世名誉編集長に就任しましたことをお知らせします。りく君(オス猫)は 2013 年 1 月から 11 年間あまりにわたって、本誌の名誉編集長を務めましたが、今年 2024 年 8 月に虹の橋を渡りました。享年 17 歳でした。
編集部内の協議を経て、りく君のお世話に当たっていた本誌ライター吉澤亨史さんに相談の上「そうしてもらえればうれしい」という言葉をいただき 10 月からりく君は本誌 ScanNetSecurity の永世名誉編集長に就任しました。
りく君に参画いただく時期に至るまでの ScanNetSecurity は、数ヶ月あるいは数年に一度、知らない会社に株を突然売却されるなど資本政策に大きな変更があったり、グループ会社の総帥(堀江貴文氏)が逮捕されその後投獄されたり、グループ会社の社員が自殺未遂をしたり、ほぼ毎年のように社長が変わったり(たしかのべ 9 回くらい)という少々とはいえない混乱の時期を経て、ようやく媒体としての方向性を模索し始めたところでした。
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りく君が参画するきっかけとなったのは、編集部の打ち上げか何かでライターの吉澤さんが「うちの猫はとにかくかわいい」と聞いてもいないのに語ってくれたことでした。「自分の家の猫がかわいくない人などこの世にいるまい」と思いながらも実際に写真を見せていただくと「た、たしかに、これは かわいい…です。ポッ」と満場一致し、猫駅長もいるのならと猫編集長就任にいくつかのプロセスと時間を経て決まっていきました。
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当時の ScanNetSecurity は、予算も人員も 10 分の 1、20 分の 1、資本規模も 100 分の1程度にも関わらず、ITmedia や日経BP などのクオリティメディアを半端に真似るような劣化再生産をしていた時期でした。
すなわち、月に 1 ~ 2 回程度外資の社長来日の記者会見などに赴いて、アジア人を見下すかのように明るい素敵な笑みを浮かべる社長の顔を写真に収めて他誌に似たり寄ったりの記事を書いて載せたり、出稿企業以外に誰が読みたいと思うのか という疑問を拭いきれない広告記事(それが業界スタンダートではあるのですが)を載せていたのでした。
りく君が存在し始めたことで、むしろ少人数で資本規模が小さいからこそできるような独自のアプローチへと進む大きなきっかけになったことは間違いないと振り返って思います。
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りく君が編集長になったことで、動物写真家の岩合光昭氏をしのぐ評価を本誌が抱いていた、絶品の「ストリート・キャット・フォトジャーナリスト」山本洋介山先生の連載「週刊セキュリティにゃークサイド」を開始することができました。連載自体は編集部の不徳の致すところにより短期間で終了したものの「にゃークサイド」はひとつの到達点にしてエポックであったと誇りを持って思い返します。
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慎重さと周到かつ的確な情報収集、猫集会などの横の繋がりの重視、そしてときに容赦のない ACD(アクティブ・サイバー・ディフェンス)。猫以上にサイバーセキュリティの管理や運用の理想を体現し、しかも同時に美しい、そんな生き物は地球上にふたつと存在しません。
その後もりく君は、アバターの力を借りて、ラスベガスやシンガポール、サンフランシスコ等々の海外取材先からの報告を行ったりと、紙面に明るい多様性をもたらしてくれました。 Black Hat USA や DEF CON でりく君の写真を撮っていると、よく女性のカンファレンス参加者に声をかけられました。りく君のかわいさは世界に通用するものであることが証明された瞬間であったと思います。
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2016 年には創刊記念のノベルティを作成する際に、りく君をモチーフにした日本手ぬぐいを作成しました。おすわりしているりく君の後ろ姿と歩く姿を図案化したもので、1 ヶ所だけ異なる図案を入れ込むことで、ScanNetSecurity 読者にとって何か仕事やキャリアでの発見や成長の鍵になるような情報を届けたいという願いを密かに込めていました。
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りく君に名誉編集長に就任いただいてから 10 年余りを経て本誌が「成長」したのかわかりませんが、たとえわずかにせよ「変わる」ことはできたと思います。
少なくとも、共同PRとかベクトルの面子とつじつま合わせの目的だけで呼ばれる記者会見というたいそうな名のついた単なる予定調和にはここ 7 ~ 8 年 1 回も出席していませんし(ただし内容が面白いものや独占取材であるものなど例外はあります)、面白い(と少なくとも書いている本人と編集部は思っている)記事を配信する回数も増えていると思います。「Scan の記事は粘着的で気持ち悪くて面白い」というニュアンスのコメントを以前川口設計社長様にいただいたことがあります。
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また、セコムトラストシステムズや SHIFT SECURITY、GMOイエラエ、TwoFive、Proofpoint、エーアイセキュリティラボ、Cloudbase のような「業界と日本経済に新しい風を吹き込まんとする未来志向の企業」を多数スポンサーとして迎えることができているのは、これらはいずれも 10 年前には考えられなかったことです。誌面は粘着的で気持ち悪いがスポンサーは凄い。そんな新しい世界線に移行するきっかけのひとつとなったのは間違いなくりく君の存在であったと思っています。
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名誉編集長ではあるものの、実は筆者がりく君に対面でお会いしたのはただ一度限りでした。それはノベルティ作成時にノベルティとりく君の写真を撮るために集合した三軒茶屋の写真スタジオで、それまで写真で見ていたよりもずっと小柄で細身であったこと、元気いっぱいのりく君がなかなかおとなしく撮影させていただけなかったこととを覚えています。
編集部員の相馬さんにはおとなしく抱っこされていたものの、りく君の敏捷ぶりを見ていた筆者は勇気を持てず、最後まで抱っこすることができなかったことが残念です。
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今後も、サイバーセキュリティの管理や運用を体現する最も美しい生物である猫のりく君を永世名誉編集長として、本誌はオリジナリティを追求していきたいと思います。
ScanNetSecurity 発行人 高橋 潤哉
おもいますニャー
ScanNetSecurity 永世名誉編集長 りく
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