独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は7月22日、「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度)全体報告書」を発表した。同調査は、デジタル人材の動向調査として2018年度から進めている調査・研究の2023年度版。
DXを推進する人材が不足しており、IPAが2024年に実施したDX動向の企業アンケート調査では、企業は個人が適切な学びを自律的に学ぶマインドにシフトすることを求めていることが明らかになった。
IPAでは、自律的な学びを促進する企業へのインタビュー調査結果を本年4月に「事例企業における自律的な学び促進の取り組み」として公開するとともに、デジタル人材個人へのアンケート調査を行い、前述の企業アンケート調査とインタビュー調査の結果をあわせて自律的な学びについて分析、考察をまとめた。
報告書では3つのポイントを挙げている。一つ目は「自律的な学びが習慣化されている人と継続している人は全体の約33%」であること。特に、学びの成果を実践しやすい先端IT従事者(データサイエンス、AI ・人工知能、IoTなど)では39%であった。
さらに、自律的な学びが習慣化・継続できている人は、人材市場における自身の相対的な位置について「十分に競争力がある」「相対的な位置を把握している、しようとしている」と回答する割合が高かった。
2つ目は「自律的な学びができている人はエンゲージメントが高い」。自身が働きたいと思う企業について重要視することを聞くと、自律的な学びができている人はできていない人に比べて総じてエンゲージメント(職場や仕事に対する愛着や一体感)が高く、企業との間で選び・選ばれる関係構築ができていると考えられる。
特に、企業の文化や価値観に関すること、心理的安全性に関すること、学びと実務実践の場や支援に関することなどの項目で満足とする回答が多かった。
3つ目は「『自律的な学び』に取組む企業が実施する促進施策を10施策に整理、4つのドライバーを抽出」。自律的に行動できる人材に選ばれることが、企業の持続可能性を左右する。そこでIPAでは「事例企業における自律的な学び促進の取り組み」において、各社が実施する促進施策を抽出し、10の施策に普遍化している。
各社が重要視している企業風土・文化等を含めて考察し、「自律的な学び」を促進するためのドライバーとして、「『自律的な学び』を促進する企業風土・文化」「『自律的な学び』の促進要素」「『自律的な学び』の社内への拡大」「『自律的な学び』の社外への拡がり」の4つを抽出している。
IPAは、個人が自律的に学び、実務で価値を発揮し続ける一方で、企業・組織はそのような人材が価値発揮し続けられるように支援、環境整備を行うことで選ばれる企業・組織になり、ともに成長し続ける関係が作られることを期待しているとした。