スペインといえばシエスタ(昼食後 3 時間程度昼寝をすること)の国である。日本でも、喫茶店や営業車などでビジネスパーソンがシエスタをしている光景にお目にかかることがあるが、あれは国民の習慣として確立されたものではない。なぜスペインという国で、SOC やサイバーセキュリティ事業が、デロイトの他国のメンバーファームと比べて突出することができたのか、その理由を少し考えてみたい。ひとつには、サイバーセキュリティの将来性に着目して事業を立ち上げた Alfonso Mur 氏のパイオニア的活動によるところが大きいだろう。ふたつめは、製品やサービスの価格や、人件費が相対的に安い点がサービス立ち上げに有利に働いただろう。また、Mur 氏によると、スペイン語が一種のバリアになって人材が海外流出しづらいという。また、言語や地理、歴史など、スペインの持つ地政学的なメリットも無視できない。スペイン語は母語として 3 億人に話されており、中国語と英語に次ぐ。また、世界 21 ヶ国で公用語として使われている。スペインは歴史地理的理由から、ヨーロッパ・中南米・アフリカ諸国への影響が強く、この地域をすべて足すと 13 億人の市場となる。中国に匹敵する規模の市場へのアクセス権を持っているということだ。取材していて感じたことだが、スペイン人の体格は日本人とそう変わらない。日頃 ScanNetSecurity 編集長を見慣れている目からすると、やや小さいと思うほどだった。にもかかわらず、2010 年のサッカーワールドカップでスペインは優勝している。セキュリティ対策とリスク管理において、人とチーム運営の比重が増しつつある現在、イスラエルと US を代表とする、セキュリティの要素技術で卓越している国以外も、セキュリティ産業で存在感を発揮できる時代が来ているのかもしれない。