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2018.04.22(日)

[特別寄稿]ネット選挙の現状とその課題

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2013年4月19日、公職選挙法の一部を改正する法案が可決・成立したことで、いわゆる「ネット選挙」が解禁になった。そして7月4日公示、21日投票の第23回参院選から、いよいよネット選挙解禁後初の選挙が幕を開けた。

そこで本稿は、マーケティング・リサーチ企業のクロス・マーケティングがセキュリティ企業のシマンテックと共同で実施した「ネット選挙に対する意識調査」のデータを基に、現状において考えられる論点について検討したい。

●20代女性におけるセキュリティ不安

個人情報の取り扱いに関しては多くの人が不安に感じている。選挙におけるインターネット活用時の不安に関する質問では、「候補者から個人情報の登録/入力を求められること」に不安を感じると答えた人が平均71.2%でトップ。続いて「ホームページなどで自分が登録した個人情報が悪用されること」が70.1%、「ホームページなどで自分が登録した情報が外部に流出すること」が70.0%と続く。

こうした不安は男性よりも女性に多いことが指摘できる。「ホームページなどで自分が登録した情報が外部に流出すること」に対する不安は、男性が平均62.6%であるのに対して、女性は平均77.4%とある。

セキュリティに不安を感じるサービスに関しても、「政党や候補者のメーリングリスト/メルマガ」は、全平均54.9%の中、20代男性が43.0%であるのに対して、20代女性は61.0%。「政党や候補者に関する選挙の情報サイト/情報ポータル」は、全平均38.5%中で、20代男性25.0%、20代女性40.0%と、20代女性のセキュリティへの不安がみられる。年齢が高くなるにつれ男女差の開きは少なくなる中で、若い世代では明確な差がみられる(なお40代男性だけは例外的に不安が少ない)。

●20代女性のSNS利用率の高さ

さらに、男女、とりわけ若い女性に顕著な傾向がみられる結果がある。信頼できる情報源であるかどうかを確認する方法についての質問では、「友人・知人の評判が良いこと」が、1~8%の層の中、20代女性だけが12.0%とあり、その他「インターネット上の評判」や「有名な企業であること」といった、評判に関わる質問で平均を上回っている。

利用SNSの安全確認方法の質問では、「特に何もやってない」が全平均25.6%の中、20代女性は38.0%と高い。また「「いいね」の数が多い」という回答では、全平均が6%の中、20代男性が12.0%、同女性が14.0%とある。さらに「SNSを利用していない」という回答は、全平均40.5%の中、20代女性は22.0%と低く、SNS利用率の高さを物語る(その次に低いのは20代男性の35.0%)。

このように、20代の女性はセキュリティへの不安の一方で、友人の評判や有名企業等といったものへの信頼が相対的に高く、またSNSをよく利用している。

●スマートフォンがもたらす選挙

中東の革命やオキュパイ運動など、スマートフォンが活躍した活動が世界中で取り沙汰されている。今回の調査では、選挙情報収集のために用いるデバイスとしてのスマートフォンが目立った。全体として情報収集ツールは「パソコン」が全平均86.3%と圧倒的であるが、スマートフォンを情報収集ツールに用いる層は20代が突出して多く、全平均19.6%の中、男性が37.0%、特に女性は51.0%と過半数に達している。

20代女性のSNS利用率の高さからも、スマートフォンはネットに加えSNSに利用されるケースが多い。このことから、スマートフォンで普段から閲覧するTwitterやFacbookをはじめとしたSNSの情報が、投票行動に及ぼす影響が考えられる。先の結果にあるように、特に20代女性は情報源の安全確認を他人の評判によって判断する傾向が強いからである。したがってSNSは口コミツールとして機能し、SNSの評判から、政治への興味や候補者の情報を目にし、若者層に影響を与えると考えられる。ただし、これを手放しで称賛はできない。

インターネットを通して特定の情報だけを集中的に受容すると、しばしば人は極端な意見を持つことがある。これをアメリカの憲法学者キャス・サンスティーンは「集団極化」と呼ぶ。選挙に当たって公平な情報ではなく、特定の情報だけを見聞きすることで政治的に動員される危険性も考えられる。

●ネット選挙の現状と課題

今回の調査からは、若い女性層はセキュリティに不安を感じながらも、スマートフォンの利用率が高いという傾向が顕著であることがわかった。こうした女性層にSNSを介した様々な口コミや選挙広告が、投票にどう影響するか注目したい。

今回はネット選挙解禁後初の選挙ということもあり、様々な問題が生じることが予想される。問題は「集団極化」にあるように、ネットの負の側面がどの程度生じるかにある。評判やデマが横行し、有権者を混乱させるといった懸念材料はもちろんある。だが同時に、候補者と有権者の距離の縮まりや情報の透明性といったネット選挙運動の特性を活かし、人々が一層の政治的関心を持つことに期待を持ちたい。

(専修大学非常勤講師 塚越健司)

筆者プロフィール
塚越健司(つかごしけんじ):1984年生。専修大学非常勤講師。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在籍中。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に「ハクティビズムとは何か」(ソフトバンク新書)、共編著に「『統治』を創造する」(春秋社)、など
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