ひとつは、OECD(経済協力開発機構)の「Reducing Systemic Cybersecurity Risk」というレポート。もうひとつは、Securicon社のTom Parker氏がBlackHat AbuDabiにて発表した「Finger Pointing for Fun, Fame, Profit and War?」というタイトルの、Stuxnetのコード・アナリシスレポート。そして、ニューヨーク・タイムズ紙の「Israeli Test on Worm Called Crucial in Iran Nuclear Delay」と題した、Stuxnetの製作者についてのレポートだ。
まずはOECDのレポートだが、これは、OECDが多様な学会の専門家を世界中から招待し、専門分野と世界の未来についてのレポート執筆を依頼する、「Future Global Shocks」というシリーズの一環である。ちなみにOECDによる「Future Global Shocks」の定義は、世界的な経済危機、大規模な伝染病、危険物質による広範囲、長期な環境汚染、気候・火山噴火などによる長期的な航空路の遮断などだ。
今回の「Reducing Systemic Cybersecurity Risk」の執筆者は、London School of EconomicsのInformation Systems and Innovation Group付属、Peter Sommer博士、そして、Oxford UniversityのOxford Internet Institute所属のIan Brown博士の二人。両氏は、ハクティビズム、産業スパイ、大規模なサイバー犯罪などのサイバー・インシデントが世界に及ぼす影響を、インターネットのインフラや歴史的観点から考察し「テレコム・サービスやコンピュータのシャットダウンによる地域的な被害はあり得るが、サイバー行為が単独で世界的大惨事を招く可能性は低い」と結論づけている。この場合の「単独のサイバー行為」の例としては、BGP(Border Gateway Protocol)などのインターネットのプロトコルへの攻撃、天文太陽フレアを利用した人工衛星やセルラー・ベース・ステーションなどの破壊などを挙げている。