●予算は年度単位、しかし人材は長い目で埼玉県の住基ネットシステム業務は、まさに2004年度の締めくくりとも言える3月末に、ISMS認証を取得した。官公庁では年度単位で予算が編成される。それも県議会などの承認を得るため、民間企業のような柔軟な運用は難しい。よって、いかに年度内にケリをつけられるよう計画するか、そして、その計画通りに運ばせるかは、担当者たちの腕の見せ所となる。そのためには情報セキュリティをはじめとした、高度なスキルや経験を要する人材が必須だ。一般的に官公庁では、人のローテーション(配置転換)が民間に比べ、かなり短期に行われ、異動人数も多い。確かに定期的な配置転換は、汚職等の防止、ゼネラリストの育成面では絶大な効果があるが、専門分野に長けた人材を輩出するには、反対に弊害となってしまうのも否めない。各地でなかなか情報セキュリティ対策が進まないのも、このあたりに原因がありそうだ。しかし、埼玉県では、スキル・経験に十分な配慮のなされた人事が以前から行われていた。もちろん異動はあるが、それによって情報セキュリティ面に関しての「新人」が入ってきても、元々のメンバーに過重な負担のかからない範囲で、新人育成ができる人員構成をとっている。さらに、民間から専門スキルを有する人材を「任期付き職員」として採用する人事面のひねり技も、前回紹介した通りだ。●まずは現状確認=職員のレベルを「自己診断シート」で確認とはいえ、セキュリティ担当(情報政策課)が最も力を入れたのは、最先端の技術導入でも、ハイレベルな技術的操作でもない。職員に対してのセキュリティレベルの確認と、その引き上げ作業との地道な繰り返しだ。セキュリティの技術的対策は不可欠だが、結局は「人」の問題に行き着く。組織にいる人のレベルを無視した計画は、いかに理想的で素晴らしいものであっても必ず挫折する。「どうせ無理」という気持ちでは、人は動かないからだ。現状のレベルをきちんとわきまえ、次のステップに足をかけられるように支援すれば、一歩一歩、着実に上っていける。その「人」の問題を当初から直視し、立ち向かっていたのである。そのために用意されたのが「自己診断シート」である。パスワードの管理をはじめ、各人がやらなければならない事項を質問票にして職員に配布し、記入してもらう。これによって、記入した本人自身が、あらためて「できていない」ことに気付く。そのような自己認識を持つことがは第一歩である。一方で情報政策課は、その結果により、何が課題であるかを明確に認識できる。それを元に、効果的な改善計画の策定や教育の実施が可能となる。具体的には、自己診断シートによって抽出された「足りない」部分を教育研修によって補うわけだ。●機会あるごとに、繰り返し啓蒙セキュリティ研修の成果を上げるために、まず必要なのが、各所属の管理者への啓蒙だ。管理者自身にその意識がなければ、そして協力体制を築いてもらわなければ、隅々までの浸透は難しい。【執筆:株式会社アイドゥ 井上きよみ http://www.eyedo.jp】── この記事には続きがあります。 全文はScan Security Management本誌をご覧ください。 http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?ssm01_ssmd