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2018.04.24(火)

利用者から見た電子自治体、電子政府(15) 〜医療情報システム

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●電子カルテは電子自治体、電子政府の試金石

 前回のテーマは、図書館に関したもので、電子自治体、電子政府のもっともよく使われる部分ではあるが、民間のサービスとの区別がつきにくく、いわゆる電子自治体、電子政府議論の主たる論点としては扱いにくかった。
 今回は、医療がテーマなので、まさに自治体、政府の守備範囲である。しかも、医療情報というセキュリティに関して敏感な分野である。医療情報システムは、そういう意味では、電子自治体、電子政府にとって重要なサービスであり、それがうまくゆくことは、電子自治体、電子政府のシステムの成功の試金石のひとつともいえる。

 フィンランドでは個人IDが普及して、旅行先でもすぐに医療サービスを受けいれ、医療の電子化が進んでいる(フィンランド元運輸通信相「電子政府で新市場育つ」2004/08/05, 日本経済新聞 朝刊)。医療情報システムは、基本的には、個人IDによる電子カルテの共有が主な課題である。e-Japanでも、2004年の重点化計画として取り上げられている( http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/05/s0526-8e.html )。

 電子カルテによる複数の診療機関により継続した医療サービスの提供は、従来の政府や自治体という公的機関の本来の役割である。しかし、実現には、いろいろ課題があり、そう簡単にはゆかない。

 表面化していないものでは、経済的な理由がある。不正経理とまではゆかないが、診療請求を微妙に調整したいという小規模の医院経営の要求があり、カルテが厳密に電子化されて、あとで調整することが困難になるのを嫌がる場合を見たことがある。もちろん、そのような事例は少ないが、実際上、カルテ電子化の費用が出ないとか、実務の手間が増えるなどの理由で敬遠されることが十分にありえる。また、診断ミス等を公開したくないという場合もあり、できるだけカルテの公開は避けたい場合もあるだろう。ただ、さすがこういった理由は潜在的に電子カルテ化の進展を妨げているにすぎない。大病院に関しては、実感としても、電子化は進んでいるように見える。問題は、個々の病院では電子化が進んでいても、そこでの情報を個人が病院間でその情報を持ち歩くことができないのである。これは、個人IDが普及していないことが原因である。

●個人IDの必要性

 まず、単純なレベルで、個人IDの統一的な付与がないと情報の一元化をすることが難しい。多くの場合、個人が病院に行くとそれぞれの病院のIDカードを作るのが通常である。それのIDの付与の方法などは病院ごとにまちまちである。病院を変わるごとにどんどんカードが増えてゆく。カードが増えてもそのカードに共通の個人ID情報があれば、個人情報を検索することは容易である。しかし、各病院のカードに共通した個人IDがないなら、情報の共有は難しくなる。

 単純に個人にIDを振る仕組みがないというだけで、情報統合は難しいのである。逆に言えば、地域の住民のほぼ全員が共通のIDカードを持っていれば、うまくいくのである。そういった成功事例として、豊田市の事例がある( http://www.asahi.com/health/medical/TKY200410160324.html )。

 豊田市の健康保険証をICカード化しただけでなく、トヨタ企業関連の保険証も同様のICカード化したのである。それで、市民のほとんどに個人IDを付与することが可能になり、病院間の情報共有の基盤ができたのである。個人IDは、情報の世界ではインフラであり、公共で整備するにふさわしいものである。豊田市の事例は、上記の記事にあるように、経産省が00年度の補正予算で01年度に実施した「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業」(通称・電子カルテの共有モデル事業)であり、56億円もの国費が投入されている。しかし、事実上成功したのは豊田市のみと言われている。

 個人IDをどうやって付与するかは、この事例でもわかるように、非常に重要なことである。そういう意味で、住民基本カードをベースにした公的個人認証は、本質的には重要である。


【執筆:武井明】

(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec

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