特定非営利活動法人 日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は7月1日、「2023年 国内情報セキュリティ市場調査報告書」を文字のコピーができない設定のPDFで公開した。同報告書は、国内における情報セキュリティに関するツール、サービスの提供を行う事業者を対象に、推定市場規模データの算出、集計、調査、分析を行い、成果物として毎年公開している重要資料。当初、経済産業省委託事業としてはじまったが終了後はセキュリティ業界の成長と発展のためにJNSAが独自事業として引き継いだ志高い資料。文字のコピーができないのはよくよくの事情があってのことと推察する。
報告書によると、日本の市場規模は1兆4,628億円と推定しており、前年からの伸び率は9.8%となっている。このうちツール(ハード・ソフトなどのプロダクト)は9,932億3,600万円で58%を占め、サービス(薬務提供、ノウハウ知的事業活動)は7,191億1,000万円で42%を占めた。
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情報セキュリティ「ツール」の中分類(カテゴリ)で最も伸びたのは「アイデンティティ・アクセス管理製品」で7.7%、小分類(製品種別)では「EDR製品」が25.0%で最も高く、「セキュリティ情報管理システム・製品」「URLフィルタリングソフトウェア・アプライアンス」「個人認証用生体認証デバイス及びその認証システム」がともに15.0%であった。
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情報セキュリティ「サービス」の中分類で最も伸びたのは「マネージド・運用サービス」で10.0%、小分類では「コンサルティング」が12.0%で最も高かった。
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EDR製品は最も伸び率が高かったがまだ規模は小さく伸び率はやや鈍化傾向にある。今後は微増傾向になり、サイバー攻撃を報じるニュースの増加やサプライチェーンセキュリティへの意識の高まりを受けて中堅・中小企業へと裾野が拡大すると予想している。
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ツールにおける伸び率が15.0%の製品種別は3つあったが、このうち増加傾向にあるのはURLフィルタリングソフトウェア・アプライアンスであった。チャットツールなどクラウド主流の動きにおいて、PPAPなどの問題提起がなされ、クラウドでの共有が進んでいることから今後も成長が期待できると予想している。また、市場規模は相対的に小さいものの脆弱性検査製品が最も高い伸び率を見せており、報告書ではこれを、昨今のサイバー攻撃被害などを理由に脆弱性対策の意識の高まりと推定している。
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サービスにおいてはマネージド・運用サービスが最も伸びている。これは、事業会社単独で十分なセキュリティ対策を行うことが難しく、運用負荷の高いものをセキュリティに強い専門企業に任せたいというニーズの高まりを反映している。特にクラウド環境を前提としたセキュリティ対策強化のニーズの高まりと事業会社でのクラウドセキュリティ専門人材の不足から、引き続き堅調な市場成長が予想されるとしている。