2021年SFプロトタイピングの旅 第7回「社会と生活が戦場化」 | ScanNetSecurity
2024.04.15(月)

2021年SFプロトタイピングの旅 第7回「社会と生活が戦場化」

 1968年に作家のクラークが発表した小説「2001年宇宙の旅」と、同年公開されたキューブリック監督による映画化作品の成功は、その後の人類の宇宙開発に少なからぬ影響を与えました。

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2021年SFプロトタイピングの旅 第7回「社会と生活が戦場化」

 1968年に作家のクラークが発表した小説「2001年宇宙の旅」と、同年公開されたキューブリック監督による映画化作品の成功は、その後の人類の宇宙開発に少なからぬ影響を与えました。

 空想科学小説(SF)という文学ジャンルの持つ力を借りて、新しい価値観や目標、今までになかった製品やサービスを考える手法は「SFプロトタイピング」と呼ばれており、Intel社の研究機関の未来学者によって提唱され、近年日本でも注目が集まっています。

 SFプロトタイピングは、飛躍や自由な発想が積極的に許容され、その点が、既知のデータをもとにしたシミュレーションや未来予測とは異なっています。

 未知の要素を最大限考慮に入れながら将来やってくる未来を思い描く。これを「将来やってくる未来」ではなく「将来やってくる脅威」に置き換えれば、それはセキュリティ担当者なら多かれ少なかれみんながやっていることではないのか。

 そんな認識のもとで、2021年夏、1名の作家を含む識者3名が集まり、サイバーセキュリティ領域でのSFプロトタイピングの利活用の可能性について考える勉強会を開催しました。3名の講演とディスカッションで構成され、ディスカッションのテーマに設定したのは、サイバー攻撃の非対称性を無効化する兵器を構想すること。

 登壇したのは、著書「SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略」を早川書房から出版(共著)したばかりの、筑波大学の大澤 博隆 先生、そして、SFプロトタイピングを活用した企業コンサルティングの実績を持つアノン株式会社の森 竜太郎 社長。そして、サイバーミステリー作家の一田 和樹 氏の3名です。(註:所属及肩書は当時)

 昨2021年をはるかに超えて不確定要素が増す現在、3名の講演とそれに続くディスカッションを、勉強会の講演再録として連載でお届けします。第7回からは作家・評論家の一田和樹氏のパートです。

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 一田和樹です。まず簡単に自己紹介を申し上げます。文筆業を営んでおりまして、小説家と呼ばれることが多いです。中でもサイバーセキュリティに関するサイバーミステリーと言われるものを書いています。その中でも比較的未来に起こるようなことを先取りして小説に取り入れていることから、SFプロトタイピングともかなり関わりがあるんじゃないかということで、本日お邪魔しております。

 私の小説の場合、普通のサイバーセキュリティとは離れてきていて、安全保障とか民主主義とか広めの話題を取り上げることが多くなってきています。国家の安全保障を抜きにしては、個人あるいは企業のサイバーセキュリティを考えることが難しい時代になっています。なぜかと言うと、個人や企業を狙っている相手が必ずしも普通のサイバー犯罪者だけではなくて、他の国の国家が支援するグループが攻撃している、ということが十分に考えられるわけです。

 そうするとサイバーセキュリティの犯人とか犯罪を追っていくと、行き着く先が国家であったり、国家の支援を受けているグループであったりする。これはかなり前からリアルに起きています。そうすると安全保障を抜きに考えられない。

 安全保障のスパンというのは、日本の場合、防衛大綱は10年ですが、開発・配備・運用を考えると、25年以上先を考えておく必要が出てきます。

 たとえば2015年に配備されたF-35という飛行機がありますけれども、あれは2070年までの運用を予定しています。つまり半世紀以上先まで使うということですね。それくらい先のことまで考えて計画を立てる必要がある。

 SFプロトタイピングがそうであるように、安全保障も25年以上先の未来・社会を考えて価値を提示することができないと計画を立てることが難しいのです。

 それに伴って、民間でも長期を見据えた計画が、必要になってきていると考えています。

 現在、戦争というのはハイブリッド戦の時代に入った、としばらく前から言われています。ハイブリッド戦とは一体どういうものか、簡単に言ってしまうと、いわゆる武力による戦い以外にサイバー戦、あるいは経済・宗教・思想・文化、あらゆるものを総合的に活用した戦いになります。


《ScanNetSecurity》

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