児童生徒に1人1台端末普及の「GIGAスクール構想」、6割の保護者はOSの種類も把握できず:トレンドマイクロ調査 | ScanNetSecurity
2024.04.23(火)

児童生徒に1人1台端末普及の「GIGAスクール構想」、6割の保護者はOSの種類も把握できず:トレンドマイクロ調査

当初 4 年間かけて「児童生徒向けの 1 人 1 台端末」「高速大容量の通信環境整備」などを実現する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、計画を前倒しし、1 年間で実施されることになった。

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 2019 年 12 月に文部科学省によって打ち出された「GIGAスクール構想」は、当初 4 年間かけて「児童生徒向けの 1 人 1 台端末」「高速大容量の通信環境整備」などを実現する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、計画を前倒しし、1 年間で実施されることになった。

 こうした状況のなかで、セキュリティ企業のトレンドマイクロ株式会社は 7 月下旬、小学校 1 年生から中学校 3 年生の子を持つ保護者と、小中学校教員を対象に、「GIGAスクールにおけるセキュリティ実態調査2021」を実施し、その結果を公表した。

 同調査では 6 月 29 日から 6 月 30 日に、小学校 1 年生から中学校 3 年生の子どもがいる保護者と、国公私立の小中学校の教員 673 人 (保護者:342 人、教員:331 人)を対象に、GIGAスクールにおける 1 人 1 台端末のセキュリティ意識を明らかにする Web アンケートを実施した。

 文部科学省では GIGAスクール構想による 1 人 1 台端末を活用した学習を推進しているが、2021 年 6 月末時点で、子どもが学校から端末を受け取ったと回答した保護者は 41.2 %、教員は 70.7 %に留まっている。

 保護者への質問によると、受け取った端末の OS は「 Google Chrome OS 」が 17.0 %、「 iPadOS 」が 14.9 %、「 Microsoft Windows 」が 7.3 %となる中、「知らない・分からない」が 60.8 %を占めた。

 同様に教員への質問によると、受け取った端末のOSは「 Google Chrome OS 」が 34.4 %、「 iPadOS 」が 26.9 %、「 Microsoft Windows 」が 14.5 %で、「知らない・分からない」は 23 %に留まった。

 調査によれば、保護者の 22.0 %、教員の 38.5 %が、1 人 1 台端末の利用にて子どもがサイバー犯罪やネット利用等に関するトラブルを経験したと回答、教員の回答によると主なトラブル内容は「学習以外の用途での端末利用(ゲームや動画視聴など)」が 12.8 %、「フィッシング詐欺など不正サイトへの接続」が 12.0 %、「アカウント( ID とパスワード)情報を盗まれる・悪用される(アカウント乗っ取り、不正アクセスの被害者となる)」が 11.1 %、「アカウント( ID とパスワード)情報を盗む・悪用する(アカウント乗っ取り、不正アクセスの加害者となる)」が 11.1 %と続いた。

 また同調査では、保護者の 58.9 %、教員の 29.9 %が、子どもが受け取った端末について、危険回避の設定やツール等の技術的対策が実施されているか理解しておらず、子どもの端末利用に関する教育的対策についても、保護者、教員ともに「アプリを勝手にインストールしないよう教える」や ID パスワード等の扱いなど全 21 項目が半数に満たず、子どもの端末利用における教育が進んでいない状況が明らかとなった。

 端末の利用に際し児童生徒が遭遇し得るサイバー犯罪やネット利用等に関するトラブルとしては、保護者は「アカウント( ID とパスワード)情報を盗まれる・悪用される(アカウントのっとり、不正アクセスの被害者となる)」が 34.8 %、「ネット上での見知らぬ人との出会い」が 34.2 %、「不正アプリ(ウイルス)への感染」が 33.0 %と続き、保護者の約 7 割がサイバー犯罪やネット利用等に関する何かしらのトラブルを心配していることが判明した。

 同じ設問に関して教員は「アカウント( ID とパスワード)情報を盗まれる・悪用される(アカウントのっとり、不正アクセスの被害者となる)」が 35.0 %、「成人向けや暴力、違法行為など、不適切な Web サイトの閲覧」が 34.1 %、「友人とのネットを介したやりとりで子ども自身が傷ついてしまう(友人関係の悪化や炎上含む被害者となる)」が 33.8 %と続き、約 8 割がサイバー犯罪やネット利用等に関する何かしらのトラブルを心配していることが判明した。

 拙速で進められている GIGAスクール構想だが、一方で 2021 年 5 月には、児童生徒の 1 人 1 台端末保有などの変化に対応すべく「教育情報セキュリティポリシーガイドライン」の第 2 回改訂版が公表されるなど、セキュリティの確保にも努力がなされている。保護者・教員・教育委員会がそれぞれ当事者としてセキュリティの確保による、安定した学びの機会提供が望まれる。
《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》

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