もちろんまだまだ企業側にもギャップはある。正しくリスク認識できていない企業もいまだ多い。そんな企業側の大きなギャップのひとつが「セキュリティ = IT 部門だけの問題、技術だけの問題」という誤解だ。武藤氏がその誤解をとくために、全国各地のセミナーや取締役会に呼ばれて行うブリーフィングで必ず語るのは、特殊詐欺のような刑事犯罪とサイバー犯罪の構造上の共通点である。サイバーセキュリティが、これまでの事務所荒らしや、騙り詐欺のような刑法犯と何も変わらない「防犯の問題」と語ると、IT 部門だけの問題ではなく全社を通して対応すべき問題だと、ようやく腹落ちしてもらえるという。
新しい製品やソリューションができると、その説明や営業にばかり走ってしまう。「この製品を入れれば大丈夫です」「このサービスを使えば安心です」という営業トークだらけになってしまい、本当に企業が理解すべき「リスク認識」や、それを「どのように考えて、どのようにコントロールするか」というような本質的な話は、営業活動の現場では殆ど語られない。するとますます「セキュリティ = IT 部門だけの問題、技術だけの問題」という誤解が進行し、また製品やソリューションサービスへの過剰な期待に繋がっていく。