本書は、その伊東氏の集大成といえる。現場を見てきただけでなく、莫大な情報と資料を読み込んだ成果がこの一冊に詰まっている。
歴史的背景、サイバー技術と戦争のかかわり、サイバー戦の機能や特徴、過去のサイバー戦の実例、サイバー兵器と戦士、法的問題など包括的な話題を取り扱っている。過去の事例や諸外国の動きも抑えてあり、未解決の課題にも触れている。
本書は当初、自衛隊のサイバー戦関係者を想定していたが、その後一般読者にもわかりやすいよう修正を加えたそうである。そのため、一般になじみのない用語については、適宜注釈がつけられていてわかりやすくなっている。同じページの下段に注釈があるのは、そのまま読み続けられるので便利だろう。また、それとは別に巻末に用語集もあるので、これはこれで言葉だけ知りたい時に重宝する。サイバー関係の言葉は、定番となるような用語集が存在しないので、こうした用語集の存在はとても助かる。