1950 年代~ 60 年代、実は CIA はアメリカ最大の文学・芸術のスポンサーだった。ジョージ・オーウェルの有名な「動物農場」がアニメ映画化された際にも、CIA が出資している。CIA は 1,000 以上の書籍を出版し、またジャーナリストをサポートした。
こうした密かな活動に対抗するのは難しい。例えば 1950 年代にアメリカ国民は「洗脳」に対して強い恐怖を抱いた。これはエドワード・ハンターというジャーナリストが、共産中国で行われているという洗脳を紹介したことによる。これにより洗脳という言葉、概念が生まれたのだ。ハンターは実は CIA の協力者であり、その描いた洗脳テクニックはフィクションだが、あたかも真実のように伝えた。
レーガン政権時代の国務長官アレクサンダー・ヘイズは、ある本で「主なテロ組織はソ連によってコントロールされている」という話を読み、CIA 長官のウィリアム・ケイシーに調査を指示した。ところが調べたところ、実はこの話の元になっていたのは CIA がイタリアの新聞に書かせた記事であり、フィクションだったのだ。架空のストーリーが自分自身に戻ってきて害を与えたということになる。
●米国政府が UFO 対策で行った印象操作
シーム氏が共著者である「UFOs and Government : A Historical Inquiry」は、アメリカ政府が 1940 ~ 80 年代に「 UFO 」と呼ばれる現象にどう対応してきたかを、開示された公文書などに基づき歴史的分析を行ったものだ。これで明らかになったのは、政府は 1953 年には UFO 現象自体は事実だと理解していたということ。だがその科学的根拠には興味がなく、それが実際にアメリカに脅威を及ぼしているか、すなわち国家安全保障の観点でのみ考えていた。そして実際の脅威は「 UFOを信じること」だとして、目撃情報などを隠す一方、あえてタブロイド紙に記事を載せるなどして、UFO を信じるのは馬鹿げている、という印象を作ったという。