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七月十日 夕方 犯人
工藤は私の正体を知らないはずだ。だったら、このまま逃げてしまえばいい。みっともないが、それしかない。だが、膝に力が入らない。脚が小刻みに震えているのがわかる。これじゃ走れない。動け。動いてくれ。私は祈るような気持ちで、自分の脚を見つめた。
「逃げない方がいいよ。素直に謝って依願退職した方が利口だよ。逃げて警察に通報されたら、逮捕されて前科者だもん」
私は観念した。工藤の言うとおりだ。前科よりは依願退職の方がはるかにいい。そもそも警察の介入がないという前提があったから、この計画を立てたんだ。依願退職するだけの話だ。
七月十日 夕方 犯人
工藤は私の正体を知らないはずだ。だったら、このまま逃げてしまえばいい。みっともないが、それしかない。だが、膝に力が入らない。脚が小刻みに震えているのがわかる。これじゃ走れない。動け。動いてくれ。私は祈るような気持ちで、自分の脚を見つめた。
「逃げない方がいいよ。素直に謝って依願退職した方が利口だよ。逃げて警察に通報されたら、逮捕されて前科者だもん」
私は観念した。工藤の言うとおりだ。前科よりは依願退職の方がはるかにいい。そもそも警察の介入がないという前提があったから、この計画を立てたんだ。依願退職するだけの話だ。