ファイル共有ツールのビジネス活用時における課題とは~6割以上の管理者が「従業員は勝手に利用していると思う」と回答 | ScanNetSecurity
2024.04.20(土)

ファイル共有ツールのビジネス活用時における課題とは~6割以上の管理者が「従業員は勝手に利用していると思う」と回答

企業内でオンラインストレージなどの利用人口が増え始めてからようやく管理側のルール整備が開始されるという流れでは、各々が利用するツールのセキュリティレベルなどが企業内で精査されていない状態が生まれ、リスクが高いといえます。

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企業内に「コンシューマライゼーション」の波が押し寄せています。この言葉は、個人が新しい端末やサービスの利用を先導し、企業のITに多大な影響を与えるという動きを指します。

トレンドマイクロは、2013年8月、勤務先における業務ファイル共有の実態に関するWebアンケート調査を実施しました。その結果、勤務先で無許可のファイル共有ツールを社外との情報共有のために業務で利用したことのある従業員は、3人に1人いることがわかりました。本稿では、調査結果を踏まえ、従業員と管理側の実態と、企業内でのポリシー策定やツールの選定にあたって必要なことを考えてみます。

●新しいITツール利用に関するルールは未整備

本調査において、勤務先から明確に許可されていない(禁止されている、規定があるかどうか不明)ファイル共有ツールの利用経験について尋ねたところ、3人に1人が、社外の方と業務ファイルを共有するために無許可のツールの利用経験があると答えました。

さらに、勤務先でのITツール利用に関するルールについて尋ねたところ、従来型のメール(Webメール以外のメール)については約8割が使用可否に関する規定があると回答しました。一方、昨今個人向けサービスを中心に利用が浸透しているオンラインストレージについては、半数以上が勤務先において規定がない、もしくは、規定があるかどうか分からないと回答しており、多くの企業で、オンラインストレージの業務利用に関するルールが未整備であることが示される結果となりました。

企業内でオンラインストレージなどの利用人口が増え始めてからようやく管理側のルール整備が開始されるという流れでは、各々が利用するツールのセキュリティレベルなどが企業内で精査されていない状態が生まれ、リスクが高いといえます。

●情報管理側の現状と抱えている懸念

では、ポリシーの整備を行ったり、企業内で共通のITツールを指定したりする立場である、情報管理者側はこの状況についてどう考えているのでしょうか。

オンラインストレージの業務利用を禁止している企業、もしくは一定の条件付きで許可している企業の管理者に対し、「あなたは、従業員が社外と業務ファイルをやり取りする際に、会社が許可したものではない(もしくは条件付きで許可している)、ツールを使用していると思いますか?」と尋ねたところ、従業員に利用を許可していないオンラインストレージを、従業員が勝手に利用しているのではないかと考えている人は6割以上(図1)にのぼっています。この結果から、新しく普及しつつあるオンラインストレージの利用に関して、管理側でも問題点は認識しているものの、実効性のあるルール整備がなされていないことがわかります。

また、業務ファイルを共有する際に利用するツールを、会社として指定している情報管理者に尋ねたところ、約6割が現状指定しているツールについて「ファイル共有ツールとしては不十分」と認識していることがわかりました。その理由として、主に「セキュリティ上、ファイルが外部に漏洩するリスクがある」や、「従業員の業務効率を下げている」といった意見がみられました。

個人、企業向けを問わず、オンラインストレージを始めとした利便性の高いITツールの普及は広まっています。一方で、利便性だけではなく、安全性も兼ね備えた業務ファイルの交換が可能となるように、企業側は指定するツールやポリシーについて再考する余地があるといえます。

●「コンシュマライゼーション」の潮流の中で企業で必要な対策

今回実施した業務ファイル共有に関する調査では、明確に許可されていないファイル共有ツールを一部の従業員が利用していることがわかりました。また、情報管理者は新しく普及するツールの利用に対してルールの整備が不十分であることもわかりました。

ファイル共有におけるセキュリティについて考えた際、データの外部への漏洩など、様々なリスクが予想されます。これらのリスクを回避するためにポリシーの策定する場合、管理者は、まず第一に企業毎に保護すべき情報資産が何であるかを明確にさせておかなければなりません。具体的なツールの利用可否を判断する前に、漏洩させてはいけない情報の優先度を明らかにしておく必要があります。

その後、具体的にポリシー内容を検討する際は、単に個人向けオンラインストレージの利用を禁止する、もしくは一般的に必要とされているガイドラインをそのまま取り入れる、などの端的な施策に留まるのではなく、業務の効率を損ねず、実用性を伴う最適なポリシーをそれぞれの業務に合った形で精査するのが良いと考えられます。

また、社内に対しポリシーの認知を徹底させるためには、ルールの必要性を十分に理解してもらうべく、業務データ交換に伴う様々なリスクや脅威について従業員教育を徹底することも必要です。単に禁止事項を羅列したポリシーを策定しても、利便性を大きく損なう内容や、遵守する意味の理解されないルールでは、従業員が勝手に指定外のものを利用する動きも免れません。

このような、実効性のあるポリシーを固めたうえで、企業全体で利用するオンラインストレージなどの導入を検討する段階に入るべきだといえます。そして、何らかのITツールを導入する際は、利便性だけでなく安全性が担保されているかどうかを十分に精査する必要があります。また、外部への漏洩防止はもちろんのこと、組織間で利用可能なストレージが明確に切り分けられ、利用者間で顧客の個人情報などが漏洩しないよう情報管理者が企業全体の管理を徹底できることも重要だといえるでしょう。

※本記事は「TREND PARKクラウド・仮想化」から転載しました※
《Trend Micro》

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