[YRI Report] MDM市場の現状と今後 | ScanNetSecurity
2024.03.28(木)

[YRI Report] MDM市場の現状と今後

現在のMDM市場では、通信キャリア各社が推奨する純正MDMをOEM提供している、オプティムやBizMobileなどの国内ベンダが大きく提供数を伸ばしている特徴がある。

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●急速に拡大するMDM市場 2015年度には121億円に

企業における業務用スマートフォンの導入拡大に伴い、MDM市場が拡大している。
MDM市場規模(エンドユーザ支出額ベース)は、2012年度には前年度比226.7%の44億円に達し、2013年度には前年度比160.9%の71億円と予測する。

拡大の背景には、スマートフォンの業務利用におけるセキュリティ面での不安を担保する形で、「MDMをセット提供」するスマートフォンの販売形態が一般化していることが挙げられる。そのため現在のMDM市場では、通信キャリア各社が推奨する純正MDMをOEM提供している、オプティムやBizMobileなどの国内ベンダが大きく提供数を伸ばしている特徴がある。それに加え、以前から部門限定でスマートフォンを導入していた企業がトライアル期間を終え、導入台数を追加するという動きも、市場の伸びを支えている。

今後も、企業におけるフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行は当面継続し、MDM市場も2015年度には121億円まで拡大すると予測する。

●「買い手主導型マーケット」の拡大により、グローバル競争が加速する

順調に拡大するMDM市場であるが、すでにMDM事業者からは中長期的な市場成長を不安視する声も出ている。MDM提供数の母数となる「法人契約の携帯電話およびスマートデバイス導入台数」には一定の上限があり、その上限の押し上げ効果が期待されるBYODも関心の高さほど拡大していないことから、いずれMDMの需要も飽和するとの見方が強い。

さらに筆者では、「ユーザニーズの多様化・具体化」がMDMベンダ間の競争を加速させると考え、動向に注目している。

現在のMDMユーザは、通信キャリアや販売代理店から提案を受け、まずは「セキュリティ面を担保」する最低限の機能(リモートロック/ワイプなど)を備えた低料金MDMを採用しているケースが大半で、いわば「売り手主導型マーケット」である。その中で、徐々にユーザがスマートデバイス利用経験を積み、「本格的な業務での活用」を模索する動きが増加している。それにともない、セキュリティ機能に特化したMDMではなく、「多様なオプション機能」の中から自社業務システムと連携して業務を効率化できる「具体的な機能」を持ったMDMに対するニーズが高まっている。すでにMDMベンダ間での乗り換えも発生し始めており、従来とは異なる「買い手主導型マーケット」が立ち上がりつつある。

特にMAM(モバイルアプリケーション管理)およびMCM(モバイルコンテンツ管理)へのニーズの高さが挙げられているが、いずれの機能も技術面・サービス面で海外MDMベンダが先行しているとされている。背景には国内MDMが「セキュリティ機能を重視」してきたのに対し、海外では「業務連携を前提」とした機能充実が進められてきたという違いが挙げられる。特にMAM/MCMはBYODとの親和性が高いとされ、BYOD普及が進んでいる海外ベンダが主導権を握っているという構図となっているのである。

現在の国内のMDM市場は、グローバルで豊富な実績を持つ海外MDMベンダ(MobileIron、Airwatch、Box Toneなど)が存在感を示せていない状況である。しかし今後は、スマートデバイスおよびMDMへのユーザニーズが多様化・具体化することで、「買い手主導型マーケット」の拡大が見込まれ、それに伴いグローバルベンダも含めた競争環境が激化すると予測する。
《矢野経済研究所 櫻木基起》

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