●ミュール起訴に乗り出したFBIバンキング用のトロイの木馬が進化して、被害が増えるのに伴い、サイバー犯罪者の手足となっているマネーミュールの存在が問題となっている。外国にいるサイバー犯罪者にとって、マネーミュールは非常に重要な役割を果たしている。海外に直接送金すると怪しまれるが、一旦ミュールへ送ってクッションを置くことで、一見すると合法的な処理に見える。Treasury Credit Unionの事件で、興味深いのは、「一部のミュールは銀行に行って、気付かずに不正に関わったかもしれないと話している」とMelgar社長がコメントしていることだ。自覚はあったようだ。ただし、残念ながら、ミュールが銀行に連絡したのは、送金を行ってからだったという。また、通常、送金額の8%と言われるミュールのコミッションについて、Treasury Credit Unionに関わったミュールが実際、受け取ったのか、受け取ったとすると、返金を求めるのかなどは今のところ明らかになっていない。しかし、この事件を伝えたKrebsは、この種の行為は犯罪に手を貸していることだと明確にして、安易に仕事を引き受けないように促すための法的処置をFBIが検討中であると、5月はじめにブログに書いている。これは、5月11日、FBIのサイバー犯罪部門のPatrick Carney部長代理が、バージニア州で開かれた連邦預金保険会社のシンポジウムで「ミュールは国際的な犯罪で大きな役割を担っていて、米国の金融機関や企業に数億ドルの被害を与えている」と問題視していることを明らかにしたためだ。さらに「不法行為だと、国民に理解させたい」と決意を表明。法的処置を課すことで、一般から注目を集め、ひいては資金や品物を受け取り、転送することは、犯罪に手を貸す行為であるとの国民の認識を広げたいとの考えだ。Carney部長代理の発言については、『THE WALL STREET JOURNAL』も報じている。FBIでは250件以上について調べていて、「犯罪インフラ全体を壊したい」という。ミュールのリクルート、採用担当者などについても捜査を進めている。また、特に犯罪と分かっていて、手助けをしていたミュールについても、強い姿勢を求める声がある。「合法的な仕事だと考えていたと考えるのは難しい」とCarney部長代理は語っている通り、特に不正と分かって関わるのは悪質だからだ。実際、4月にはカリフォルニア州のカーソン市から、銀行口座のログイン情報を不正に獲得することで、45万ドル以上を盗もうとしたという事件で5人が起訴されている。事件では、職員1人のノートパソコンがトロイの木馬に感染。ユーザ名やパスワード、口座番号などログイン情報が盗まれていた。実際に事件が起こったのは2007年の5月だ。送金は数回に分かれていて、最初は※本記事は有料購読会員に全文を配信しました(バンクーバー新報 西川桂子)