利用者から見た電子自治体、電子政府(18) 〜教育 | ScanNetSecurity
2024.04.25(木)

利用者から見た電子自治体、電子政府(18) 〜教育

●e-japan からみると

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●e-japan からみると

 教育の対象は、大雑把に小中高、大学、成人と分かれ、同じ教育といってもその位置付け、状況、手法等はかなり異なってくる。政府のかかわりが多いのは、基礎的な教育である小中高であり、e-japan 政策の中でも、小中高に高速ネットワークを引くことがうたわれ、ミレニアムプロジェクトで、普通教室に、パソコン2台、液晶プロジェクタ1台配備など、かなり予算を投入している。

『e-Japan重点計画-2004 2。人材の育成並びに教育及び学習の振興』( http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/ejapan2004/040615-32.html )を見てみよう。その主要な項目は次の6つである。『(2)学校教育の情報化等によれば』、1)学校のIT環境の整備、2)IT指導力の向上、3)教育用コンテンツの充実・普及、4)教育情報提供体制の整備等、5)障害のある子どもたちへの対応、6)IT教育の充実。大学、成人教育もe-japan の中で重要とされているが、自治体、政府の役割が大きい小中高に関して述べてゆく。

 まず、e-japan の初期と現時点では、ADSLの普及などに非常に大きな隔たりがあり、さらに家庭でのインターネット利用の普及があり、学校でのIT教育と隔たりが大きくなってきていると言えるだろう。そして、インターネットが原因で、小学校で殺人事件が起こるなど、従来では予想できなかった状況が発生している。小学生でも喜んで検索エンジンを使い、ニュースを調べ、そして、魔法のiらんど( http://ip.tosp.co.jp/kyuden/Tospi500.asp )で自分のページを作ったりするのである。

 一方、パソコンを自宅で使っていない人もまだたくさんいる。大学に入って、はじめてまともにパソコンやインターネットを使い始めたという人も結構いたりする。エクセル、ワードなどの使い方を教えればいいというIT教育の発想では到底対処できない状況がインターネットの世界に発生している。しかも、小中高のネットワーク接続環境は着実に進歩している。そこまではいいが、実際のパソコンや、プロジェクタの導入がどうなっているかは不明な部分もある。

 教育に新聞を掛け声で、なされているNIE(NewsPaper in Education http://www.pressnet.or.jp/nie/aboutnie/top.htm )の発表に1年ほど前にでたことがあるが、OHPを使っての発表で、インターネットに接続した液晶プロジェクタでプレゼンではなかった。NIEの会合だから、当然、インターネット+液晶プロジェクタだと思っていたので、ちょっと吃驚したのが正直な印象であった。

 また、ある教育関係の展示会で関係者から聞いた話であるが、予算配分の自由度がある場合には、パソコンより、優先順位の高い黒板の購入等に予算がまわされる場合もあると聞いている。実際の教育の現場では、IT教育よりも、重要なことがあり、まずそれを踏えるべきだからである。したがってその予算判断は正しい場合もあるだろう。(この種の議論は、『インターネット学習をどう支援するか』佐伯 胖,苅宿 俊文著に詳しい)。教育には、IT以前に重要なことがあるという前提で、上記の6つの項目のうち、IT指導力の向上、教育用コンテンツの充実・普及をごく簡単に述べてみる。


●IT指導力の向上 メディアリテラシーがこれからの課題。

 まず、『ア 公立学校教員のIT指導力の向上(文部科学省)2005年度までに、約90万人の公立の小中高等学校、盲・ろう・養護学校等の概ねすべての教員がコンピュータ等のITを用いて子どもたちを指導することができるようにする。』とあるが、ネットワークや、インターネット上のサービスを考えると事実上かなり困難だといえる。自宅でバリバリにインターネットをやっている生徒達と教師の間とでは、インターネット利用のスキルに関して、かなりの隔たりがある。また、特にネットワークがからむセキュリティ上のアップデートなど、教師の力量をはるかに超えるだろう。

 インターネットに接続する場合には、さすがに公立学校ではフィルタリングソフトをいれて、有害コンテンツを生徒が見ないようにするようになっているはずである。有害コンテンツを見せないようにするフィルタリングソフトは、いくつかの会社から出されているが、日本語対応が重要なので、国産のフィルタリングソフトベンダが頑張っている。有名なところでは、日本PTA全国協議会推薦製品のi-フィルター( http://www.daj.co.jp/es/ifse/index.htm )がある。ただ、これらのフィルターは、新しい有害コンテンツの登場により有償のバージョンアップが強いられる。バージョンアップコストは学校によって負担になる等の問題も生じている。

 また、学校内ネットワークにはセキュリティ上の問題や、ネットワーク障害の発生などがあり、専門家ではない教師には到底手に負えないだろう。もちろんこれらの問題は、予算の問題であり、学校に納品しているシステムベンダの役割である。しかし、学校によっては最近まで、できる教師の責任になっている場合もかなりあったようである。さすがに最近ではこのような事態は改善されつつあるようである。


【執筆:武井明】

(この記事には続きがあります。続きはScan本誌をご覧ください)
http://www.ns-research.jp/cgi-bin/ct/p.cgi?m-sc_netsec
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