なんだね君は?
「内部不正三部作も、いよいよ最後。今回は、内部不正の最大の要因「動機」について解説します。いかに内部不正が人類の歴史と共にあり続けたか、古からのキリスト教の7つの大罪をもとに分析する分かりやすい。人の欲望というのは、科学や文明が発達しても変わらないもんだ。中編で解説した不正のトライアングルそれぞれの対策も、教科書的なモノではなく、現場のリアル的なものを提示しますよ!」

●最大の要因 動機
圧倒的に多いのが、性欲か、ギャンブル・投資関連。古来より人間が際限なくのめり込むのは、この2つが代表格だ。次に高級車や不動産マンション、ロレックスといった所有欲が来る。
歴史上の偉人達もまた、この欲に取りつかれている。新1万円札上の偉人の渋沢なんちゃらさんも、偉業の一方で、なかなか盛んな欲で知られている。欲は人間の生きる根源的なエネルギーと言える。欲を無くして偉業を成し遂げた人もいないわけではないが、強い願いと欲求は紙一重だ。エネルギッシュだけど無欲な人、なんて、ちょっと想像しにくいよね。
●動機を考えるなら、キリスト教の7つの大罪
キリスト教には、「7つの大罪」という区分がある。映画やアニメでも、よくモチーフにされている。人間を罪に導く欲望や感情で、内部不正の分析にぴったり、非常によく整理されている。内部不正との結びつきが弱いものもあるけど、順に説明していくよ。
(1)傲慢
思い上がりや虚栄心で、実力や実績に見合わない地位や栄誉を欲しがるってこと。これは不正のトライアングルの中の「動機」に紐づいている。
・大谷翔平は俺を必要としている
・俺こそが社長に相応しい
・俺はお前ら庶民とは違う、特別な存在だ
(2)強欲
端的に言えば、モノを欲しがるってこと。高級マンション、高級車、高級腕時計、宝石などなど。人は自分の価値を地位や肩書、モノで他人に示すから、金で買えるモノというのは、手っ取り早く自分を偉く見せてくれる。モノはモノの方で、ブランディングというと格好いいけど、いわば蘊蓄で、そのモノを身に付ければブランド・ストーリーを身にまとったセレブになれる、そのような気がするのさ。これも不正のトライアングルの中の「動機」に紐づいている。厄介なことに、この強欲には際限がない。憧れのフェラーリを手に入れたら、すぐ次に、もっと特別なフェラーリをもう1台欲しくなる。推し活やらコレクターと、強欲は紙一重。高級腕時計などは、毎年、台数限定の特別モデルが発表されるよね。世界に何百台の限定、メモリアルは、それは確かに何百台しかないけれど、刻印やデザインが違うだけだ。
(3)嫉妬
他人の財産や境遇を妬むもので、その「埋め合わせ」の為に内部不正を働く。そういえば銀行には、こんな言葉があった。「いつかは支店長」とね。飛びぬけた才能は無くてもマジメに勤め上げた人の、出世ゴールが支店長だ。そして同期入行が全員支店長になれる、訳が無い。能力評価主義とか業績評価とか、人を評価するということは、評価されない人もいるということだ。そうした人事制度が嫉妬を生み、内部不正のリスクを高めている。