RSA Conference USA に行くとつくづくこの国のサイバーセキュリティというのは儲かっている産業なのだという意を強くする。
開期中は街をラッピングカー(SaaS サービスなどのブランドロゴやメッセージをラッピングした自動車)が何台も走行しているし、ふと空を見上げるとセキュリティ企業のロゴの横断幕を掲げた小型プロペラ機が、のんびりとサンフランシスコの青空を横切っている。ラッピングカーと言われてバニラトラックぐらいしか思い浮かばないここ日本とはハッキリ雰囲気が違う。

2025 年の RSA Conference(RSAC)で注目を集めたセッションのひとつは、クラウドストライク創業者兼 CEO のジョージ・カーツによる基調講演だった。テーマは近年のトレンド「AI」ではなく、サイバーセキュリティ業界の未来、特に CISO(最高情報セキュリティ責任者)の役割、より端的に言うなら「 CISO の出世と栄達」を猛烈にエンパワーメントする内容だった。
「オマエら! CISO だったらチマチマした目標立ててないで、ドーンと取締役会の椅子をねらえ!」
オマエら呼ばわりはもちろん実際していないのだがメッセージとしての強度はあきらかにこのトーンだった。
意地悪に見るなら、世界から集まった各国の CISO 達に向けた、トランプよろしくのポピュリズム的メッセージに過ぎないのだが、そこには大統領よりは信頼できるに足る根拠があったし、具体的かつ実践的なアドバイスすら含まれていた。
講演で「取締役会の椅子をねらえ!」「ボード(取締役会)へ行け!」と連呼しつづけるジョージ・カーツの姿に記者が想起したのは、作家 北方謙三の、雑誌に連載された人生相談の歴史的名言だった。スーツが似合う四角い顔のダンディという点も似ている。

さて、ではいったいどうすれば CISO は取締役会に席を得られるのか?