経済産業省は3月5日、日本のサイバーセキュリティ産業・技術基盤を強化するための包括的な政策パッケージである「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を取りまとめ発表した。
同戦略では、国内で活用されるセキュリティ製品の多くを海外製が占めている現状や、導入実績が重視される商慣習、十分な開発投資が行われにくい事業環境といった課題に対応するため、政府機関等による有望なセキュリティ・スタートアップの製品・サービスの試行的な活用や、大規模な研究開発の推進、国内商流を担うSI事業者とベンダーとのマッチングの場の創出などの包括的な政策対応を提示している。
同戦略で挙げている主な政策対応は下記の通り。
1.スタートアップ等が実績を作りやすくなる/有望な製品・サービスが認知されるための取組
・「スタートアップ技術提案評価方式」等の枠組みを活用し、政府機関等が有望なスタートアップ等の製品・サービスを試行的に活用
・有望な製品・サービス・企業の情報を集約・リスト化し、政府機関等へ情報展開する、業界団体と連携し審査・表彰を実施
2.有望な技術力・競争力を有する製品・サービスが創出され、発掘されやすくなるための取組
・セキュリティ関連の技術・社会課題解決に貢献する技術・事業を発掘するための「コンテスト形式」による懸賞金事業等の実施
・約300億円の研究開発プロジェクトを推進し社会実装を後押し
・日本商流の中心であるSI事業者と国産製品・サービスベンダーとのマッチングの場を創出
3.供給力拡大を支える高度人材が充足し、国際市場展開が当たり前になるための取組
・高度専門人材の育成プログラムの拡充、セキュリティ人材のキャリア魅力を向上・発信
・海外展開を支援、標準化戦略を促進、関係国との企業・人材交流を促進
また同戦略では、これらの政策対応の結果として期待される今後のロードマップを提示し、10年以内で安全保障の確保やデジタル赤字の解消への貢献を実現するとともに、「国内企業の売上高を足下(約0.9兆円)から3倍超(約3兆円超)とする」というKPIを掲げている。
株式会社FFRIセキュリティ 代表取締役社長の鵜飼裕司氏は「我が国へのサイバー攻撃の特異性や安全保障の観点においては、海外企業との連携のみならず、国内においても必要な脅威情報を独自に蓄積・分析し、その情報に基づく製品・サービスの研究開発と提供が不可欠です。本取り組みは、まさに国内のサイバーセキュリティ対策を大きく後押しすると考えます。」とコメントしている。