サイリーグってどんな会社? ~ エグゼクティブ・フェロー徳丸氏登壇「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」2/18(火) 19(水) | ScanNetSecurity
2025.02.28(金)

サイリーグってどんな会社? ~ エグゼクティブ・フェロー徳丸氏登壇「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」2/18(火) 19(水)

 「既存のセキュリティ業界の枠組み」に収まらない動きがここ数年散見されるようになっている。「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」の 1 個 1 個のセッションが提供する情報の貴重さ稀有さももちろんだが、通しでこのカンファレンスに参加すれば、未来のセキュリティ業界や新しい流れを感じることができるかもしれない。

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サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム

 「デジタル技術で日本を元気に」をスローガンに掲げるチェンジホールディングス株式会社は、さまざまな事業を展開していく過程で、常にセキュリティがボトムネックになることにある日気がついて、サイバーセキュリティ事業を行う「サイリーグホールディングス株式会社」を 2023 年 12 月に設立した。

 通常なら、グループ会社の「セキュリティ子会社」として診断や監視業務を担わせたり、グループ外に外販して事業として育てたり、あるいは海外の優れたセキュリティ製品を担いで売るといった戦略をとるものだが、サイリーグの発想はそれとはだいぶ違っていた。

 そもそも日本を元気にするのが彼らの目標だから、自分のグループだけを安全にすることは存在意義とはすこし違う。また、グループ外に顧客を求めても安全になるのはその顧客だけ。さらに、GAFAM などのプラットフォーマーによるデジタル植民地的な経済の流れを変えて、日本が抱える「デジタル赤字」を解消することこそが「日本を元気にする」のコア目標として内包されてもいるから、EDR、XDR、SASE 等々流行りの製品を海外から仕入れて売って儲けるというビジネスモデルとは親和性が高くない。

 「サイリーグ」とは、いわば「サイバーセキュリティ版 “ジャスティスリーグ” 」だという。ヒーローをたくさん集めて組織化し日本を救うというわかりやすい世界観である。サイリーグという「箱」を作って、そこに日本の優れたセキュリティ人材と企業を、さながら映画『ジャスティス・リーグ』のスーパーマンやバットマンのように結集させ、現状と未来を変えていく。ホールディングス会社がホールディングス会社を作るって「いったい何をやりたいの?」と最初思ったがこういう明確な理由があった。

 さて、それでいま現在、ヒーロー的な会社がサイリーグにたくさん集まっているのかというと、取材協力をいただいた原稿でこんなことを書くのは誠に心苦しい限りなのだけれどそれほど多くない。というか本稿執筆時点で 2 社しかありません。

 こんな状態でサイリーグホールディングス株式会社は 2 月 18 日 (火) と 2 月 19 日 (水) の両日「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」と題した、16 コマ 500 名規模のカンファレンスを行おうとしているのだから、ちょっとどうかしているかもしれない。「少なくとも 5 社ぐらいは集めてからにした方がいいのでは」とも思うし、順番が違う気がする。

 一方でこういう、セキュリティの対象を明確に国全体(地方も含む)に拡げて事業を行うような活動が、これまでのセキュリティ業界ではそもそもほとんどなかった試みでもある。このぐらいの順番違いは起こっても仕方がないのかもしれない。

 「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」運営事務局への取材では「もっとサイリーグの仲間を増やしていきたい」「“この会社と一緒にやっていきたい” そう思われる会社であり事業になりたい」といったコメントも飛び出した。だから少し珍しいセキュリティイベントになることはまちがいない。

 もしユーザーにとってこのイベントに参加するメリットが講演内容以外にあるとしたら「欲しくもないものを無理くり売りつけられる心配が少ない」ということだろう。何しろ現段階では売りつけるものがそんなにないのだから。

 たとえ製品についての情報提供が行われるセッションだとしてもモノ売りの内容ではなく、あくまで「知見を共有する趣旨で話をしてくれ」と明確に講演者に伝えているという。本誌 SCAN の取材に対してこのように答えたということは、それは同時に、もし「セールスピッチ 100 %的」な講演が会場で行われたら「SCAN が嘘をついた」「サイリーグが SCAN の取材で嘘をついた」と盛大に X で火をつけて回って構わないという承諾を本誌読者、イベントの全参加者に与えたことを意味しているのだから、この言葉には一定の信頼を置いていいと思う。

 主要なセッションをいくつか挙げるなら、まず最初に言及すべきはセキュリティ業界の良心 徳丸 浩 氏の講演である。徳丸氏の属する EGセキュアソリューションズ株式会社(イー・ガーディアングループ)は 2023 年 10 月にチェンジホールディングスのグループ入りし、サイリーグのメンバーとなっている。こんなことを書くと怒られかねないが、ジャスティスリーグ的に言うなら、徳丸氏はさしずめ「バットマン」にでも当たるだろうか(ルックスと紳士的な物腰、そしてやる気になるとめっぽう腕が立つという点で)。

 徳丸氏は「サイリーグ エグゼクティブ・フェロー」として登壇する。これまでの「イー・ガーディアン CISO」「EGセキュアソリューションズ CTO」という立場ではなくなるので、事業領域である Web アプリや Web セキュリティよりもだいぶ広い射程の話を聞くことができそうだ。事務局の情報によれば、AI が本当は答えていけないことを遠まわしに聞くことで答えさせたり、してはいけない仕事をやらせてしまう、そんな話も含まれるというからこれは期待できそう。

 森・濱田松本法律事務所の蔦 大輔 弁護士によるセッション「ランサムウェア対応の法律実務」も注目である。いざランサムウェア被害が発生した際に必要となる「技術【以外】の対応」のうち、情報システム部門やセキュリティ担当者も知っておくべき法律的な知識が共有される予定だ。蔦弁護士は NISC 上席サイバーセキュリティ分析官という経歴を持ち、同時にランサムウェア被害の事後対応を弁護士として何度も実際に担当した実績も持つ。なかなか聞けない話になりそうだから、もしエクスクルーシブでなければ本気で本紙が取材したいと考えているセッションでもある。

 「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」は誉め言葉ではなく事実として、Palo とかそういう大手ベンダーの年次イベントに「たった一人の基調講演者」として招かれても全くおかしくない、あるいは過去何度か招かれたことのあるクラスの人が何名もそろっている。セッション一覧をざっとでいいので見てもらえればすぐにわかっていただけると思う。

 冒頭に書いたように、「セキュリティベンダー」として製品開発を行って販売してユーザーを増やしたり、あるいは大手企業グループの「セキュリティ子会社」としてグループの安全を守ったり、あるいは目利きの「セキュリティ商社」または「セキュリティに強いインテグレーター」として海外製品を売ったり導入したりといった、こうした「既存のセキュリティ業界の枠組み」に収まらない動きがここ数年散見されるようになっている。

 GMO がクールなセキュリティベンチャーを続々とグループ入りさせていることもそうだし(当初 1 社限りと思っていたらその後 2 社目があったことで “ 3 社目もありうるのでは” という可能性が生まれ、業界再編の意思を感じさせる面白い状態になっている)、セキュリティ企業への投資に特化したファンドの組成が昨 2024 年行われたこともそうだ。

 海外ではクレジット会社最大手の Mastercard が同じくインテリジェンス大手の Recorded Future を超巨額で買収する事案などにも同様の新しい流れを感じた。

 いずれも既存フレームワークではなかなか事態は変わらないという認識から出発した、創意工夫の結果であることは間違いないと思う。

 これらの新しい動きに共通しているのは「大人の経営的視点」である。良い製品を作ればマネタイズできて事業は伸びていくというピュアさとは少し異なっている(後者が悪いと言っているのでは全くありません。どちらかというと本誌は後者寄りです)。

 サイリーグホールディングス株式会社は SMBC および MS&AD との合弁会社を今年の春設立する予定だという。合弁会社の目的をごく簡単に言ってしまえば、サイリーグ入りしてくれたメンバー企業の製品やサービスを売るための仕組みの構築である。全国に広がるネットワークを持つ都市銀行と保険会社、そしてその先にある無数の法人顧客を考えると、もし目論見通りにいけばこれほど強力な「販売チャネルにしてセールスエンジン」も他にはあるまい。一枚上手を行く大人の計画性を感じる。さっき「まだ 2 社しかいないのに 500 名のカンファレンスって順番がおかしくないか?」と書いたが、こっちの販売基盤構築の方の順番は圧倒的に正しい。

 「サイリーグ エグゼクティブ セキュリティ フォーラム」の 1 個 1 個のセッションが提供する情報の貴重さ稀有さももちろんだが、通しでこのカンファレンスに参加すれば、未来のセキュリティ業界や新しい流れを感じることができるかもしれない。

《高橋 潤哉( Junya Takahashi )》

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