何かと話題の韓国で 3 月 19 日 (水) から 21 日 (金) まで、韓国最大のビジネスカンファレンス会場である KINTEX で総合セキュリティカンファレンス「SECON & eGISEC 2025」が開催される。今回で 24 回目の開催。
来場者事前登録 URL
https://www.seconexpo.com/2025/eng/visit/join.asp
出展社向けプラン紹介資料
https://www.seconexpo.com/data_file/pds/247286316_4918.pdf
物理セキュリティとサイバーセキュリティ双方をカバーする統合セキュリティカンファレンスとしては東アジア最大規模。2025 年は約 400 社の国内外のサイバー/物理セキュリティ企業がブース出展し、開期中 30,000 人の来場者を見込む。
平和憲法下の日本でも RISCON TOKYO(危機管理産業展)のようなイベントは存在するが、韓国は冷戦終了後の現在でも東西(韓国においては南北)の深すぎる溝が残る世界でも稀な国家である。ドイツのように分断はしても国民同士が戦闘を行っていない国とは条件が根本的に異なる。男性には徴兵制度があり、なおかつ隣国北朝鮮と現在進行形で戦争が行われている(長く停戦しているだけで南と北の戦争状態は現在も継続中)。異なる文脈になるが、つい先日は戒厳令の宣布も行われた。
こうした政治的、地政学的ダイナミズムにあふれる韓国ならではの、物理とサイバー双方の最新技術の「リアル」を知ることができる展示会として「 SECON & eGISEC 」には日本からの参加者も近年顕著に増加している。これは明らかに「行ってきましたよ」とは周りに言わない/言えないタイプのカンファレンスである。
以前取材で「うちの製品は裁判を一度も起こされたことがないから優秀」とランサムウェア対策製品のブースで聞いたときは驚いた。つまり韓国ではランサムウェア対策製品を導入してランサムウェア被害に遭うと製品ベンダを裁判で訴えることがそれほど珍しくないということだ。ものすごい消費カロリーだと思うが、日本のユーザー企業もこの猛烈に腰の強い姿勢を大いに見習ってはどうだろうか。そうすれば日経コンピュータの超人気連載「動かないコンピュータ」(IBM 等の大手 SIer と大規模総合病院や自治体などの間の泥仕合(どろじあい)をレポートする有意義な連載)にランサムウェア対策製品ベンダへの告訴事案が紹介される世界線もあるかもしれない。
韓国を除いた主要来場者層は中国や日本、インドネシアなど。香港、マレーシア、シンガポールなどの来場者も増加しており、2024 年の開催報告書にはマレーシア政府 CSO のエンドースコメントが掲載された。また、ヨーロッパ、EMEA 地域からの参加も増えており、特に「イスラエル - 合衆国系サイバーセキュリティ製品」採用を地政学的に慎重に考える中東系国家の来場者も会場で散見される。
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昨年開催された SECON & eGISEC 2024 来場者の国家内訳
● 業種別分類
IT:27.9 %
セキュリティ:25.0 %
政府:22.1 %
● 職種別分類
Chief Security / Privacy Officer:26.3 %
エンジニア(施設管理):24.4 %
IT 管理者:14.2 %
● 来場者の製品に対する関心度(複数回答)
サイバーセキュリティ:39.7 %
映像監視:36.4 %
アクセス制御:18.8 %
数字で最も多い韓国の組織の来場者は、政府機関、軍、重要インフラ、法執行機関、ウリ銀行やハナ銀行など金融系、Samsung、Hyundai、SK、LG、ロッテ、Kakao などのグローバル企業や財閥系企業が多い。
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ビジターとして訪問する場合は事前登録をすれば入場無料。コンベンションセンター KINTEX は日本でいうなら幕張メッセ的な会場なので宿泊先は周囲に多数存在する。アクセスは仁川国際空港よりは金浦空港からの方が近い(タクシーでアクセス可能な距離)。日本人来場者はまだそれほど多くないため、本誌が今年 2024 年春に取材した際はむしろ歓迎された印象だった。会話の多くは英語になるが、第二外国語の話者同士の会話になるため、お互いそれほど得意ではないため、白人と会話するような緊張感や小馬鹿にされる感はない。また、5 ~ 10 %くらいの出展社が、過去日本法人駐在だった等の経験を持つ日本語による説明員を準備していた。
SECON2024に日本から出展企業として参加する場合、壁と柱や電源などがある「Shell Scheme Booth」が 1 平方メートル 73,847 円(480 ドル)で最小 9 平方メートル(73,847 × 9 = 66 万円)から。
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出展プランの詳細は下記資料の 2 ページを参照のこと。
出展社向けプラン紹介資料
https://www.seconexpo.com/data_file/pds/247286316_4918.pdf
韓国のサイバーセキュリティ専門誌 Boannews と Security World の調査によれば、2023 年の韓国国内のサイバーセキュリティ市場及び物理セキュリティ市場の総計は 7,748 億円で、2024 年には 104 %成長の 8,044 億円を見込んでいる。日本企業の出展はまだ多くないので RSA Conference USA 同様に、東アジア圏、ASEAN市場の開拓のひとつの手段として検討する価値がある。
本誌は昨年 SECON & eGISEC 2024 を取材したが、韓国企業の説明員の、良い意味で「昭和のおじさん」的な暖かさと、取材中に「たとえば狙撃者がこのビルのこのフロアにいた場合ですね」といった、有事前提のコメントがごくごく普通に出てくるのが印象に残った。サイバーセキュリティや物理セキュリティ、およびそのふたつの融合の一歩先をいく製品や事例から、時差がない国でいろいろな事業のヒントを得られるに違いない。すごく頑張れば日帰りできないこともない。