情報処理学会は6月22日、SNS活動休止アカウント対応の難しさについて、同会・学会誌「情報処理」のnoteで発表した。明治大学の湯淺墾道氏が執筆している。
Twitterを買収したイーロン・マスク(Elon Musk)氏が2023年5月に、数年間にわたってアクセスのないアカウントの削除を進めているとツイートしたことで、Twitter上の活動休止アカウントの削除をめぐる問題が表面化している。
湯淺氏は活動休止アカウントの問題点として、アカウントが乗っ取られた場合に詐欺行為など各種のサイバー犯罪への利用や他のユーザへのSPAMメッセージ送信、悪質な誹謗中傷や名誉毀損を行うための利用などの犯罪や不法な行為の温床となる恐れがある点を挙げている。
活動休止アカウントを停止するにあたっての問題点として、「停止の是非」と「停止後のデータの取扱い」の2点を挙げている。
「停止の是非」については、一般ユーザと芸能人や政治家等の公的な活動に関わるものとアカウントの種類ごとの検討が必要とし、特に公的なアカウントは公共性を有する場合があり、停止によって過去の公的な活動や言動の検証ができなくなる等の問題が生じることを指摘している。
アカウント停止後のデータの取扱いについて、データそれ自体には所有権が発生しないため、事業者は原則として自由に利用できることになるが、個人情報に該当するものについては、遺族の個人情報の一部である場合や遺族のプライバシーを侵害する場合には自由に利用することができない。
また、SNSアカウントの死後の管理方法について、生前に本人が取扱いを指定することや親族が閉鎖を求めることができる場合があるが、本人と親族の意向が異なる場合にどちらが優先されるかという問題が残っている。アカウント類の遺族への承継は難しい場合が多く、遺族への承継という観点から、バックアップの作成やどのサービスを利用しているかを親族へ伝えておくことが必要となるとしている。