公安調査庁は12月19日、「内外情勢の回顧と展望」(令和5年版)を公表した。
同書では、冒頭に特集1として「ロシアによるウクライナ侵略をめぐって揺れ動いた世界」を、特集2として「経済安全保障関連」を、特集3では「サイバー空間の広がりに伴う脅威の拡散」を掲載している。
特集3の「サイバー空間の広がりに伴う脅威の拡散」では、「公共空間としての重要性を増すサイバー空間」として、宇宙・海洋分野でのサイバー空間の拡大が続いており、それに伴いサイバー攻撃が社会に及ぼす影響もあらゆる場面に拡大していると指摘している。
宇宙関連のサイバー攻撃として、ロシアによるウクライナ侵略の1時間前に米国情報通信企業「Viasat」が運用する衛星通信網のネットワークがサイバー攻撃を受け、ウクライナで数千件、欧州全体で数万件の顧客に対する通信サービスが停止したことを挙げ、ウクライナの軍及び警察も同社の衛星を使用していたとされることから、米国や英国ではロシアが関与したものであると発表し、ウクライナ軍の指揮管制の混乱が目的と指摘している。
同書では、ロシアによるウクライナ侵略では、ロシア政府・報道機関などによる「偽情報(ディスインフォメーション)」の流布や、2014年の「クリミア併合」の際にも見られたサイバー攻撃などを駆使する「ハイブリッド戦争」の要素も確認されたとしている。
同書ではその他、国家が関与・支援するサイバー攻撃として中国、北朝鮮、イランについても取り上げている。