日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は8月25日、世界規模でデータ侵害の経済的影響を調査した結果を発表した。米国IBM Securityでは現地時間7月28日に、同調査結果を公表している。 同調査によると、データ侵害インシデントにかかるコストは1回あたり平均424万ドル( 4 億 6,718 万円)で、17年前に調査開始してから最高額を記録した。データ侵害を経験した世界中の500を超える組織を対象に分析したところ、パンデミックによる業務オペレーションの急激な変化で、セキュリティ・インシデントの抑制が困難となりコストが増大、コストは前年比で10%増加した。 リモートワークの影響としては、パンデミック期間の急速な移行がデータ侵害コストの上昇につながっていると考えられ、データ侵害の要因としてリモートワークがあげられる場合(496万ドル)と、そうでなかった場合(389万ドル)との発生コストを比較すると、平均100万ドル以上の差があった。 パンデミックによって業務オペレーションに大きな変化が生じた医療や小売り、接客業、消費者向け製造業・流通業等の業界では、データ侵害コストが前年比で大きく増加、特に医療業界のデータ侵害コストは1件あたり923万ドル(前年比200万ドル増)と圧倒的に高額となった。 同調査によると、データ侵害の結果として流出した情報の中で最多は顧客の個人情報(氏名、メールアドレス、パスワードなど)で、また最も多くみられた侵害の原因として、盗まれたユーザー認証情報が利用されたことが挙げられ、これらの要素が重なって、ユーザー名とパスワードの漏えいが将来の情報漏えいにつながるスパイラル効果が発生の可能性があると指摘している。 AIやセキュリティ・アナリティクス、暗号化の導入は、データ侵害コストの軽減要因のトップ3で、活用していない企業と比較すると125万ドルから149万ドルのコスト削減を実現している。 クラウド・ベースのデータ侵害については、ハイブリッドクラウドを実践する企業の侵害コストは361万ドルで、主にパブリッククラウドを利用している企業の480万ドル、主にプライベートクラウドを利用する企業の455万ドルに比べて低コストとなっている。 データ侵害に対するリモートワーク及びクラウド移行の影響として、調査対象の約20%の企業はリモートワークがデータ侵害の要因になったと回答、平均的なデータ侵害と比較して約15%高い496万ドルの損害を被った。 セキュリティの自動化導入については、調査対象企業の約65%が自社のセキュリティ環境に自動化を部分的または全面的に導入していると回答、2年前は52%で13%の増加となった。自動化を全面的に導入している企業の侵害コスト平均290万ドルに対し、自動化を導入していない企業ではその倍以上の671万ドルに達した。