「○○社の案件は勉強になった…」 長時間に及んだ本連載の取材の終盤頃、日商エレクトロニクス株式会社の坂口武生が、遠い目をしながらボソッとこんな言葉をつぶやきました。「何かユニークな、クラウドセキュリティや CASB の導入事例はないか?」という取材班の問いに答えた言葉でした。 なにより、この男から「勉強」などという殊勝な言葉が出たことに取材班は大いに驚きました。 そもそも坂口はビジネスシーンなのに一人称が“俺”(しかも初対面で)なのですから、坂口に「勉強になる」などと言わしめるほどの案件がもしこの世にあるとしたら、もはやそのクライアントは一人称が“俺”を通り越した“俺様”であるに違いないことでしょう。果たしてそんな無双企業は存在するのでしょうか。 もちろんその企業への CASB 導入とその後の運用は成功させたそうです。しかし「まだ思い出にはなっていない」と坂口は編集部に打ち明けました。 ひょっとしたらその案件は、導入が終了した今になっても、毎晩真夜中に汗びっしょりの坂口を漆黒の闇の中、寝床の上に飛び起きさせているのかもしれません。 最終回の疑問その9では、本連載「最後の事件」として、日商エレで最もクラウドセキュリティを知る男をすら苦しませた、ある案件を紹介します。